ルキウス・アントニウス

ルキウス・アントニウス：共和政ローマの政治家・軍人

ルキウス・アントニウス（Lucius Antonius）は、共和政ローマ時代の政治家、そして軍人として歴史に名を刻んでいます。特に、彼の兄であるマルクス・アントニウスとの関係は深く、彼を常に強力に支援しました。紀元前41年には執政官（コンスル）を務めています。

生い立ちと出自

ルキウスの父はマルクス・アントニウス・クレティクス、祖父はマルクス・アントニウス・オラトルであり、弁舌の才に長けていました。しかし、祖父は紀元前86年にガイウス・マリウスの支持者によって殺害されています。母ユリアは、ガイウス・ユリウス・カエサルのいとこという血筋です。

若年期の放蕩と兄の支援

若い頃、ルキウスは兄マルクスやガイウスと共に、ローマの裏社会で過ごしたと伝えられています。プルタルコスによれば、彼らは賭博場に入り浸り、大酒を飲む日々を送っていたようです。しかし、ルキウスは常に兄マルクスの忠実な支持者であり続けました。

紀元前44年、マルクスが執政官を務めた年、カエサルが暗殺されるという大事件が起こります。この年、ルキウスは護民官として、カエサルがローマに不在の際に最高権力者をカエサル自身が指名できる法案を提出しました。カエサルの死後も、彼は兄マルクスを支え続け、一般市民やカエサルの退役兵に有利な農地法を提案。紀元前43年には、ムティナ（現在のモデナ）でのデキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌスに対する作戦にも参加しています。

執政官就任とペルシアの戦い

紀元前41年、ルキウスは執政官に就任します。同僚執政官はプブリウス・セルウィリウス・ウァティア・イサウリクスでした。執政官就任初日には、アルプスでの勝利を祝う凱旋式を挙行しています。この年、彼は兄マルクスをクレオパトラの宮廷から呼び戻そうと画策する兄の妻、フルウィアを支援しました。また、不人気であったオクタウィアヌスに対抗するため、8個軍団からなる軍を編成し、フルウィアと共に蜂起します（ペルシアの戦い）。

ルキウスはローマに進軍してマルクス・アエミリウス・レピドゥスを追放し、市民に三頭政治の廃止を約束しました。しかし、オクタウィアヌス軍が接近すると、ペルシア（現在のペルージャ）に撤退し、そこで篭城しますが、最終的には冬になって降伏しました。ペルシアは破壊されましたが、ルキウス自身は助命され、オクタウィアヌスによってヒスパニアの総督に任命されました。その後の彼の消息は不明です。

キケロによる評価

キケロは、その『ピリッピカ』（アントニウスに対する弾劾演説）の中で、ルキウスに対して敵意を抱いており、彼を好ましくない性格の持ち主として描いています。

参考資料

Appian, Bellum Civile, v. 14 ff.
Dio Cassius xlviii. 5-14.
Suetonius, De Vita Caesarum, II, 14-5.
Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Antonius". Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 2 (11th ed.). Cambridge University Press. pp. 150–151.

関連項目

共和政ローマ執政官一覧
凱旋式のファスティ

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