デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス

デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス：カエサル暗殺の裏切り者

デキムス・ユニウス・ブルトゥス・アルビヌス（紀元前85年頃 - 紀元前43年）は、共和政ローマ期の軍人であり政治家です。彼はガイウス・ユリウス・カエサルの腹心の一人でしたが、最終的にはカエサル暗殺に加担するという劇的な行動に出ました。

生涯

デキムス・ブルトゥスは、カエサルの遠縁にあたり、紀元前77年に執政官を務めた同名のデキムス・ユニウス・ブルトゥスの息子でした。若年時代は、プブリウス・クロディウス・プルケルやマルクス・アントニウスらと行動を共にしていました。

ブルトゥスが歴史に名を残すようになったのは、カエサルのガリア戦争にレガトゥス（総督代理）として従軍した時からです。ガリア遠征軍には、プブリウス・リキニウス・クラッススやクィントゥス・トゥッリウス・キケロなど、ローマ元老院の有力者の子弟も多数参加していました。ガリア戦争において、ブルトゥスは紀元前56年のモルビアン湾の海戦で、海戦に強みを持つウェネティ族を相手に勝利を収めました。また、カエサルからたびたび軍団の指揮を任され、アレシアの戦いにも参戦し、ガリア戦争の勝利に大きく貢献しました。

カエサルとグナエウス・ポンペイウスの間で行われたローマ内戦でも、ブルトゥスはカエサルを支持しました。元老院派に味方したマッシリア（現在のマルセイユ）に対する戦い（マッシリア包囲戦）では、カエサルから船団を任され、ルキウス・ドミティウス率いる船団の迎撃と同市の封鎖を行い、ガイウス・トレボニウスと共にマッシリアの降伏に貢献しました。

紀元前48年から紀元前46年まで、ブルトゥスは法務官格副官としてガリアの統治を行い、紀元前44年にはカエサルからガリア・キサルピナにおける執政官格の指揮権（インペリウム）を与えられ、紀元前42年の執政官にも指名されていました。しかし、属州ガリア・キサルピナへ出発する前の紀元前44年3月15日、彼は従兄弟のマルクス・ユニウス・ブルトゥスとガイウス・カッシウス・ロンギヌスが首謀したカエサル暗殺に加担し、ポンペイウス劇場でのカエサル刺殺にも参加しました。ブルトゥスは8番目にカエサルを刺したと伝えられています。

カエサル暗殺後、有名な言葉「ブルータス、お前もか」は、暗殺の指導者の1人で、カエサルが最も愛したと伝えられるセルウィリアの息子であるマルクス・ユニウス・ブルトゥスを指すとされています。数日後、カエサルの遺言状が公開されました。そこには、第一相続人として当時18歳の大甥ガイウス・オクタウィウス・トゥリヌス（後のアウグストゥス）、第二相続人としてデキムス・ブルトゥスの名前が記されていました。カエサルの遺言状では、ブルトゥスは第1位遺産相続人である大甥オクタウィアヌスに次ぐ第2位遺産相続人の1人であり、オクタウィウスが若年の場合の後見人にも指名されていました。この事実を知ったブルトゥスは、顔面蒼白になり、暗殺に加わったことを後悔し、家に閉じこもったと言われています。

その後、ブルトゥスは共和派の将軍として、カエサルの後継者を自任していたマルクス・アントニウスらカエサル派に抵抗しました。生前のカエサルによって任命されていたガリア・キサルピナに移動していたブルトゥスは、ムティナ（現在のモデナ）でアントニウスの攻囲を受けましたが、アウルス・ヒルティウス、ガイウス・ウィビウス・パンサ・カエトロニアヌスの両執政官およびオクタウィアヌスの救援を受け、包囲を脱し、アントニウスを追撃しました。しかし、ガリアでマルクス・アエミリウス・レピドゥスがアントニウスに合流すると、これに敗北し、逃走中に殺害されました。

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』の中では「デキウス」として登場しますが、これはシェイクスピアの誤りです。

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