ルクセンブルクの歴史

本稿では、ルクセンブルクの歴史を詳細に解説します。地理的にドイツ語圏とフランス語圏の境界に位置し、多様な文化が交差するこの地の歴史を紐解きます。

揺籃期からローマ時代へ

ルクセンブルクにおける人類の活動は、旧石器時代前期に遡ります。新石器時代以降には、人々の生活範囲が拡大し、定住生活が始まったと考えられています。

紀元前3世紀頃には、ケルト人の一派であるトレヴィール人がモーゼル川中流に定住しました。その後、ローマ帝国の侵攻を受け、ガリア戦争の結果、ルクセンブルク地域はローマの支配下に入ります。ローマの支配下で、ルクセンブルク周辺は4世紀にわたり比較的安定した時代を迎え、道路網の建設やキリスト教の布教が行われました。しかし、3世紀から4世紀にかけてゲルマン民族の侵入が激化し、ローマ帝国は北ガリアから撤退。ルクセンブルクはゲルマン民族の支配下に入ります。

フランク王国の時代

フランク王国の成立後、ルクセンブルクはフランク王国の支配下に入ります。カロリング朝の時代には、ルクセンブルク一帯は王国の中心地域となり、カール大帝もこの地で重臣会議を開きました。フランク王国の分裂後、ルクセンブルクはロタール1世の支配下に入り、ロタリンギア王国の一部となります。その後、メルセン条約により、ルクセンブルク周辺は西フランク王国へ併合されましたが、リブモント条約によって東フランク王国が奪い取ることとなりました。

ルクセンブルク伯の成立と独立への道

フランク王国の衰退後、各地で有力者が台頭し、その中の一人がルクセンブルク伯爵ジークフリートです。963年、ジークフリート伯爵はトリーアの聖マクシミン修道院との間で土地の交換契約を結び、これが現在のルクセンブルク市の中心部を形成するきっかけとなりました。ジークフリートの孫であるジゼルベールが「ルクセンブルク城伯」を、曾孫コンラッド1世が初めて「ルクセンブルク伯爵」を名乗り、事実上のルクセンブルクが形成されました。

その後も、ルクセンブルク伯は領土拡大を図りますが、周辺の司教区との関係から、その拡大は محدود的でした。コンラッド2世の死後、男系が途絶えたため、ルクセンブルク伯領はナミュール伯家のアンリ4世が継承。ここにルクセンブルク・ナミュール家が成立しました。

アンリ4世の後継者争いの結果、エルムシンドがルクセンブルク女伯爵となり、リンブルフ公爵家との婚姻を通じて、アルロンの侯爵領を獲得しました。この時代、ルクセンブルク伯は神聖ローマ帝国との距離を置き、フランスの影響を受けるようになります。公用語もフランス語に置き換えられ、伯爵家の紋章も確定しました。

中世から近世へ

エルムシンドの息子アンリ5世は、領土の形を整え、フィアンデン伯を傘下に収めました。アンリ5世の息子アンリ6世は、リンブルク公家の継承問題に介入し、ブラバント公爵と対決しましたが、ウォリンゲンの戦いで敗死しました。

ルクセンブルク家は徐々に勢力を拡大し、神聖ローマ皇帝にアンリ7世が選出されます。アンリ7世は息子のジャンをボヘミア王位に就け、ルクセンブルクはドイツに引き寄せられます。ジャンは勢力拡大のために奔走し、フランス王家との関係を深めました。1346年、ジャンの息子シャルルがカール4世として神聖ローマ皇帝に選出されますが、ジャンはクレシーの戦いで戦死しました。

カール4世は、ルクセンブルク伯領を売り払い、後にヴェンツェル1世に譲渡。ヴェンツェル1世は、伯爵位から公爵位へ昇格させることにより、その地位を強化しました。ヴェンツェル1世の死後、ヴェンツェル2世が後を継ぎましたが、ルクセンブルクを資金を得るための道具として扱ったため、人々の評判は著しく低いものでした。1388年、ルクセンブルク公国はモラヴィア辺境伯ジョスへ抵当として譲渡され、「抵当物件時代」と呼ばれる時代を迎えます。

ブルゴーニュ、ハプスブルクの支配

1443年、ルクセンブルクはブルゴーニュ公国の一部となり、1839年の独立まで隷属状態が続きます。その後、ハプスブルク家の支配下に入り、スペイン領ネーデルラントの一部となります。16世紀には、フランスとの間で争奪戦が繰り広げられ、要塞化が進められました。スペイン継承戦争の結果、オーストリア領ネーデルラントとなり、マリア・テレジアとその息子ヨーゼフ2世の時代には改革が行われましたが、フランス革命の影響を受け、フランスに併合されます。

ルクセンブルク大公国の成立

1813年、ナポレオンが敗北すると、ルクセンブルクは連合軍に占領されます。ウィーン会議の結果、ルクセンブルクは大公国に昇格し、オランダ王国との同君連合となります。また、ドイツ連邦にも加盟し、プロイセン軍が駐屯することになりました。1830年のベルギー革命の影響を受け、ルクセンブルクもベルギーの一部となりますが、1839年のロンドン条約により、国土が半減したものの、独立を維持しました。

独立から現代へ

1839年、ルクセンブルク大公国は独立を果たしましたが、政治、経済、国民意識の問題を抱えていました。経済面では、ドイツ関税同盟に加盟し、工業化が進められました。1866年の普墺戦争後、フランスがルクセンブルクを買収しようとしましたが、プロイセンの反対により失敗に終わりました。1867年、ロンドン会議により、ルクセンブルクは非武装永世中立国とされることが決定し、プロイセン軍は撤退しました。

1890年、ギヨーム3世の死後、ルクセンブルク大公位はアドルフが継承し、オランダとの同君連合は解消されました。第一次世界大戦では、ドイツ軍がルクセンブルクに侵入し、占領下におかれました。第二次世界大戦では、ナチス・ドイツに占領され、ゲルマン化政策が強行されましたが、国民の抵抗により、民族の独立を護り抜きました。

戦後、ルクセンブルクは国際連合に加盟し、ヨーロッパ統合にも積極的に参加しました。ベルギー・ルクセンブルク経済同盟を再構築し、ベネルクス三国として経済協力を進めました。1999年には、ユーロを導入し、ヨーロッパ経済統合の一翼を担っています。

現代のルクセンブルクは、多文化が共存する国際的な金融センターとして発展を続けています。

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