ルクレティア (アルテミジア・ジェンティレスキ、ロサンゼルス)

ルクレティアの紹介

『ルクレティア』は、イタリアのバロック期に活動した女性画家アルテミジア・ジェンティレスキが、1627年頃に制作した作品です。この絵は、現在ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館に所蔵されています。ルクレティアは古代ローマの執政官であるルキウス・タルクィニウス・コッラティヌスの妻であり、彼女の悲劇的な自殺の瞬間が描かれています。この作品はアルテミジアによる3点のルクレティア関連の絵画の一つで、他の2点は一つがミラノの私人コレクションに、もう一つがポツダム新宮殿に保管されています。また、ナポリのカポディモンテ美術館にも以前はアルテミジアの作品が所蔵されていましたが、現在は別の画家に帰属しています。

来歴

この作品は、アルテミジアが1620年代末にヴェネツィアで過ごしていた時期に制作されたと考えられています。1627年に書かれた詩がこの絵を指摘しているとも言われており、1980年代にカンヌの個人コレクションにて特定されるまで、長い間その存在は忘れ去られていました。2021年にはゲティ美術館で購入されましたが、その時の価格は公表されていません。ただし、2019年には530万ドルという金額で売却されていたことが記録されています。

作品の詳細

この描写は、ティトゥス・リウィウスの『ローマ建国史』に基づくもので、古代ローマの女性ルクレティアを表現しています。絵画の中で、ルクレティアは暗い背景に浮かび上がり、短剣を手にした姿が描かれています。彼女の白い肌や美しい衣服は、これから直面する悲劇的な状況との対比を強調しています。ルクレティアは、貴族の妻でありながらローマ王の息子によって凌辱され、自らの潔白を証明しようとした末に命を絶つ決意をします。彼女の死は、腐敗した王制ローマに対する反乱を引き起こし、女性の自由と力の象徴として後世に語り継がれることとなります。アルテミジア自身は、若いころに性的暴力を受けた経験があり、この物語に対する個人的な感情を抱いていました。

アルテミジアは彼女の作品において、強い女性像を頻繁に描いており、この『ルクレティア』もその一環です。彼女は男性中心の社会で独自の成功を収めた芸術家としての立場を確立しています。多くの作品において、彼女は女性たちの苦悩や勇気を感情豊かに表現しました。実際、彼女のルクレティアに関する作品は生涯を通じて4点存在し、いずれも、短剣を胸に突き立てようとする直前の彼女の姿を描いています。

1627年にヴェネツィアで書かれた詩の中で、アルテミジアの『ルクレティア』は称賛を受けています。その作者は不明ですが、ジョヴァン・フランチェスコ・ロレダンである可能性が指摘されています。この詩は、アルテミジアがヴェネツィアに滞在中に交際を持ったクリエイターたちの作品に関するもので、この絵が持つ美しさと力強さを称賛しています。アルテミジアの作品は、16世紀のヴェネツィア派絵画の伝統に深く根ざしており、彼女の優雅で洗練されたヒロインの表現は、その流れを引き継いでいると言えるでしょう。

まとめ

『ルクレティア』は、アルテミジア・ジェンティレスキの代表作の一つで、強い女性像を描いた歴史的な絵画です。彼女の作品は、形式や技術のみならず、彼女自身の経験や感情を反映しており、今なお多くの人々に深い感動を与えています。

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