ルシン語

ルシン語（ルシンご、русиньскый язык）は、東スラヴ語群に属する言語であり、ルシン人によって使用されています。この言語は、セルビアのヴォイヴォディナ自治州において公用語の一つとして認められており、また、ウクライナのザカルパッチャ州、スロバキア東部、ポーランド南東部、ハンガリーなど、広範な地域で話されています。

ルシン語は、ウクライナ語との間に多くの共通点が見られるため、特にウクライナにおいてはウクライナ語の方言として捉えられる傾向があります。しかし、ルシン語を母語とする人々の間では、ウクライナ語とは異なる独立した言語であるという認識も強く存在しています。

地域変種

ルシン語には、地域によって多様な変種が存在します。

カルパチア・ルシン語：カルパチア山脈周辺で話されるルシン語は、1990年代の社会主義体制崩壊後、ルシン人自身によって地域ごとに標準語が制定されました。主なものとして、スロバキアのプレショウ変種、ポーランドのレムコ変種が挙げられます。ウクライナで使用されるザカルパッチャ変種も存在しますが、公式な標準語としては成文化されていません。これらの標準語は、各地域の方言を基盤としており、正書法には若干の差異が見られます。

Pryashiv Rusyn (rue-pry)
Hutsul (rue-hut)
Bačka (rue-bac)
Subcarpathian Rusyn (rue-sur)
Dolinian Rusyn (rue-dor)
レムコ語
Boyko (rue-boy)
南ルシン語（ユーゴスラビア・ルシン語）：カルパチア山脈から移住したルシン人によって話されています。この変種は、カルパチア・ルシン語よりも長い文章語の歴史を持ち、その起源は20世紀初頭に遡ります。

パンノニア・ルシン語 (rue-par)

音韻

ルシン語の音韻体系には、以下のような特徴があります。

子音：南ルシン語では、周辺のセルビア語やクロアチア語と同様に、子音の口蓋化・非口蓋化の対立が弱まる傾向が見られます。
母音：/ɪ/と/ɤ/の母音は、中央寄りになりやすく、/ɪ̈/や/ɤ̈/のように発音されることがあります。

アルファベット

ルシン語は、主にキリル文字を使用して表記されます。

脚注

[1] 服部倫卓, 原田義也 編『ウクライナを知るための65章』明石書店〈エリア・スタディーズ〉、2018年。
[2] 貞包和寛『ウクライナ、ルシン、レムコの多層的な関係』。

関連項目

ルーシ語
ルシン人
パンノニア・ルシン語
パンノニア・ルシン人

外部リンク

Ethnologue report for language code rue （英語） - エスノローグ
LL-Map
* MultiTree

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