ルチアナ・パルッツィ

ルチアナ・パルッツィ（Luciana Paluzzi）は、1937年6月10日にイタリアの首都、ローマに生を受けた女優です。1950年代から欧米の映画・テレビ界で国際的に活躍し、特にスパイアクション映画における印象的な役柄で広く知られています。

彼女の俳優としてのキャリアは、1954年に公開された作品『愛の泉』で始まりますが、この時の出演はクレジットされませんでした。その後、活動の場をイタリアやフランスの映画・テレビ界に移し、数々の作品に出演して経験を積みました。この時期の出演作には、ブリジット・バルドー主演のコメディ『裸で御免なさい』（1956年）や、スティーブ・リーブス主演の神話スペクタクル『ヘラクレス』（1958年）などがあります。

転機となったのは、1958年にテレンス・ヤング監督が手掛けた作品『今は死ぬときでない』への出演です。この作品を通じて彼女はハリウッドへの進出を果たし、活動の幅を大きく広げました。そして、1965年には再びテレンス・ヤング監督のメガホンのもと、世界的に大ヒットした人気スパイアクションシリーズの第4作、『007 サンダーボール作戦』に参加します。

『007 サンダーボール作戦』において、パルッツィは当初、メインのボンドガールであるドミノ役の候補に挙がりましたが、最終的にその役はミス・フランス出身の女優クローディーヌ・オージェに決定しました。しかし、パルッツィは作品に不可欠な存在として、冷酷かつ魅力的な女殺し屋フィオナ・ヴォルペ役を演じることになります。SPECTREの幹部であるエミリオ・ラルゴの愛人であり、ジェームズ・ボンドを幾度となく窮地に追いやるフィオナ役は、その妖艶さと冷徹な演技で観客に強烈な印象を残し、彼女の代表的な当たり役となりました。

国際的な活躍は『007』以降も続き、1968年には日本の巨匠、深作欣二監督がメガホンを取った日米合作のSF特撮映画『ガンマー第3号 宇宙大作戦』にも重要な役で出演しました。宇宙ステーションの危機を描いたこの作品は、日本国内でも話題となりました。

さらに、アメリカのテレビドラマシリーズにも積極的にゲスト出演し、その存在感を示しました。代表的な出演作には、スパイアクションの『0022アンクルの女』、SFアクションの『600万ドルの男』、人気刑事ドラマの『ハワイ5-0』といった、当時の人気番組が名を連ねます。彼女は様々なジャンルの作品で、多才な演技を披露しました。

映画界でのキャリアに加え、パルッツィは私生活においても変化を経験しています。1960年にアメリカ人俳優のブレット・ハルゼイと結婚し、一人息子をもうけましたが、夫婦関係は長くは続かず、1962年に離婚しました。その後、1980年にはテレビ番組配給会社であるソロモン・エンターテインメントの代表、マイケル・ソロモン氏と再婚し、新たな家庭を築きました。

デビュー作の『愛の泉』や初期のイタリア・フランス映画から、ハリウッド進出作『今は死ぬときでない』、そしてキャリアの頂点ともいえる『007 サンダーボール作戦』、日米合作の『ガンマー第3号 宇宙大作戦』に至るまで、ルチアナ・パルッツィのフィルモグラフィーは非常に多彩です。彼女はその美貌と演技力をもって、様々な役柄を演じ分け、国際的な舞台で活躍した女優として、映画史にその名を刻んでいます。『砦のガンベルト』（1967年）、『クランスマン』（1974年）、『愛はエーゲ海に燃ゆ』（1978年）など、後年の作品でも存在感を示しました。

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