ルドルフ・フェルディナント・ヘス

ルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘスは、1901年11月25日にドイツ南部のバーデン＝バーデンで生まれました。厳格なカトリックの家庭で育ち、父親からは聖職者になることを期待されていましたが、第一次世界大戦中に軍隊に入隊し、オスマン帝国軍の一員としてイラクやパレスチナで戦いました。戦後、義勇軍に参加した後、ナチ党に入党。1923年には、リンチ殺害事件に関与した疑いで逮捕され、刑務所での生活を経験しました。

釈放後、ハインリヒ・ヒムラーとの出会いを経て、親衛隊に入隊。ダッハウ強制収容所での勤務を皮切りに、強制収容所の管理業務に従事しました。1940年、アウシュヴィッツ強制収容所の初代所長に就任。当初は防疫通過収容所として計画されていたこの収容所は、ヘスの指揮下で急速に拡張され、隣接するビルケナウにも巨大な収容所が建設されました。1941年には、ヒムラーからユダヤ人絶滅計画を聞かされ、アウシュヴィッツを抹殺センターに改築するよう命令を受けました。

ヘスは、アドルフ・アイヒマンらとガス殺の実行方法を協議し、チクロンBを使用したガス殺を決定。1941年10月からアウシュヴィッツでのユダヤ人ガス虐殺が開始されました。アウシュヴィッツには、労働力として利用できる者とそうでない者が選別され、後者はガス室へ送られました。アウシュヴィッツでの犠牲者数は諸説ありますが、約100万人と推測されています。

1943年、アウシュヴィッツでの恣意的な囚人殺害や汚職の疑いで調査が行われ、ヘスは所長を解任されました。その後、親衛隊経済管理本部のDI部長として勤務しましたが、1945年には、偽名を使ってイギリス軍の捕虜となり、一旦は釈放されました。しかし、1946年に再逮捕され、ニュルンベルク裁判で証言。その後、ポーランドへ移送され、裁判で死刑判決を受けました。1947年4月16日、彼が大量虐殺を行ったアウシュヴィッツで絞首刑に処されました。

ヘスは死刑執行前に手記を残しており、その中で「軍人として名誉ある戦死を許された戦友たちが私にはうらやましい。私はそれとは知らず第三帝国の巨大な虐殺機械の一つの歯車にされてしまった。」と述べています。また、自身を「血に飢えた獣」や「残虐なサディスト」と見なす人々に、自身もまた「心を持つ一人の人間だった」と訴えました。

歴史家エルンスト・ノルテは、ヘスの証言には拷問による誇張があると指摘し、ヘスが証言した犠牲者数は誇張されていると主張しています。しかし、ガス室での殺人については、ヘスの証言を信用できると述べています。現在、アウシュヴィッツの死亡者数は約110万人とするのが主流の見解です。

ルドルフ・ヘスは、映画やドラマでたびたび描かれており、彼の生涯とホロコーストにおける役割は、歴史の重要な一部分として語り継がれています。

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