ルドヴィーコ・トレヴィザン枢機卿の肖像

『ルドヴィーコ・トレヴィザン枢機卿の肖像』は、イタリア・ルネサンスを代表する画家アンドレア・マンテーニャが、1459年から1460年頃に制作したテンペラ画です。この作品は、板に描かれており、現在はドイツのベルリン絵画館に所蔵されています。

歴史的背景

描かれている人物が、ヴェネツィア出身の枢機卿ルドヴィーコ・トレヴィザンであることは、確実視されています。この根拠となるのは、かつてブロムリー・ディヴェンポート・コレクションに所蔵されていた本作の複製に、男性の名前、肩書き、そして紋章が記されていたからです。さらに、クリストフォロ・ディ・ジェレミア作とされるメダルや、1630年に出版された「Illustrium virorum elogia」に掲載された銅版画にも、この肖像画がパドヴァのフランチェスコ・レオーネの所蔵品であると明記されています。

トレヴィザン枢機卿は、スカランピ・メッザロータとしても知られ、裕福で教養のある人物でした。1440年6月29日のアンギアーリの戦いでは、教皇軍を率いて武功を上げ、その功績により同年、枢機卿に任命されました。1459年にはマントヴァ公会議にも出席しています。この肖像画は、マンテーニャがまだパドヴァにいた頃、マントヴァで自身の地位を確立する前に依頼されたと考えられています。

作品の概要

この肖像画では、枢機卿が暗い背景を背に、4分の3正面向きの姿勢で描かれています。マンテーニャは、強いキアロスクーロ（明暗法）を駆使し、人物の量感を強調することで、古代ローマ美術の胸像彫刻を彷彿とさせるような、力強く立体的な表現を試みています。枢機卿の真剣で集中した眼差し、そして固く閉じられた唇からは、政治家や外交官としての顔だけでなく、戦争の指揮者としての強い意志も感じられます。

マンテーニャは、顔の細部（唇、皺、聖職者のトンスラ）を丁寧に描き込むだけでなく、衣服の質感にも注意を払い、人物の高い社会的地位を表現することに成功しています。作品全体を通して、マンテーニャの卓越した描写力と、対象人物の内面を深く捉える観察眼が際立っています。

参考文献

La Grande Storia dell'Arte - Il Quattrocento, Il Sole 24 Ore, 2005
Kleiner, Frank S. Gardner's Art Through the Ages, 13th Edition, 2008
* Manca, Joseph. Andrea Mantegna and the Italian Renaissance, 2006

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