ルナ10号

ルナ10号の概要

ルナ10号（ロシア語：Луна-10、ラテン文字表記：Luna 10）は、1966年に旧ソ連によって打ち上げられた無人の月探査機です。この探査機は、4月3日に世界初となる月の周回軌道に成功裏に到達し、約2ヶ月間にわたり月やその周辺の宇宙を観測しました。

設計

ルナ10号は、月を周回するオービターと、そのオービターを月軌道に送り届けるための飛行ステージから構成されていました。飛行ステージの設計は、前の探査機であるルナ9号から引き継がれており、ルナ10号ではランダーがオービターに置き換えられました。

探査機本体の形状は円筒の上にドームがかぶったようなもので、高さは1.2メートル、直径は0.75メートル、質量は245キログラムでした。月の周回中に多様な観測を行うための機器として、ガンマ線スペクトル計、磁力計、流星物質検出器、放電カウンター、赤外線観測装置、X線検出器、荷電粒子検出器の7種類を搭載していました。

飛行ステージは、探査機を減速し月周回軌道に投入する役割を果たしました。これができなければ探査機は月を通過してしまうため、強力な逆噴射ロケットエンジンが必要でした。ルナ9号では着陸用に使用されたこのエンジンは、ルナ10号では月軌道に投入するために利用されました。また、地球から月に向かう際の軌道修正や、逆噴射中の姿勢制御も飛行ステージが担っていました。探査機全体の質量は1597キログラムで、電力は搭載された化学電池によって供給されていましたが、これには運用期間に制限がありました。

ミッションの進行

ルナ10号は、1966年の3月31日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からモルニヤ8K78Mロケットによって打ち上げられました。探査機はロケットの第4段に結合されたまま、地球の周回軌道に入り、その後第4段エンジンが噴射され月に向かう軌道へと移行しました。不要となった第4段は分離され、4月1日には飛行ステージによる中間軌道修正が正常に実施されました。

4月3日、ルナ10号は月に8000キロメートルまで近づいたところで逆噴射ロケットを点火し、その結果減速が行われ、見事に月周回軌道に投入されました。投入直後の軌道は楕円形で、最も月に近づいた際の高度は349キロメートル、最も遠ざかった際は1015キロメートルでした。また、この軌道は月の南北極を通る軌道に近いものでした。逆噴射後20秒で飛行ステージは分離され、オービターは月の周回を開始しました。

オービターは、月の周回中に多くの貴重な観測データを収集しました。観測の結果、月には磁場が存在しないか非常に弱いこと、月面の岩石が玄武岩に似ていること、月には明確な大気が存在しないこと、さらに月の重力には地域ごとの偏りが存在することが明らかになりました。

しかし、搭載されていたバッテリーは次第に消耗していきました。運用が続いた中で、ルナ10号は月を460回周回し、56日後の5月10日に電力不足によって運用を終了しました。ルナ10号はその重要な成果によって、次世代の月探査ミッションの基盤を築くことに貢献しました。

関連項目

• - ルナ計画

参考文献

• - “Luna 10” (英語). NASA - NSSDC. 2008年5月25日閲覧

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