ルナ21号

ルナ21号

ルナ21号は、ソビエト連邦のルナ計画のもとで開発された無人月探査機です。1973年1月8日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、月面に到達しました。この探査機は、搭載していた無人月面車ルノホート2号を用いて、4ヶ月を超える期間にわたり月面の広範囲にわたる探査活動を行いました。

機体構成と特徴

ルナ21号は、先に打ち上げられ成功したルナ17号と基本的に同じ設計を採用していました。機体は、月面への精密な軟着陸を担う降下ステージと、月面上で移動しながら観測を行う月面車ルノホート2号の二つの主要なモジュールから構成されていました。

降下ステージには、着陸時の衝撃を和らげるための4本の脚と、速度を制御するための複数種類の逆噴射エンジンが装備されていました。これにより、探査機は安全に月面に降り立つことが可能でした。

月面車ルノホート2号は、鉢を伏せたような形状の与圧された本体を持ち、月面を自走しました。ルナ17号に搭載されたルノホート1号の改良型であり、例えばカメラの開口部形状などに変更が見られました。

ルノホート2号には、以下のような様々な観測機器が搭載されていました。

月面の静止画やパノラマ画像を撮影する複数のカメラ
月面の物理的・機械的性質を調査する装置
太陽から放出されるX線を観測する装置
光度計、磁力計、放射計
* 地球からのレーザー光を受けて反射し、距離測定に利用されるコーナーキューブ装置

車体上部のカメラ映像は、地球の管制センターで走行ルート選定に利用されました。移動速度は、時速1kmまたは時速2kmの選択式でした。

走行系は独立駆動式の8つの車輪で構成されており、一部の故障が全体に及ぼす影響を軽減する工夫が凝らされていました。電力源は、昼間は太陽電池パネルによる発電と充電。夜間は活動を停止し、搭載されたポロニウムの崩壊熱によって探査車内部の機器を保温しました。

探査ミッションの経緯

1973年1月8日、ルナ21号はプロトンロケットで打ち上げられ、地球周回軌道を経由して月へ向かいました。1月12日には月周回軌道（高度約100km×90km）に投入。その後、軌道修正によって近点高度を16kmまで下げました。

1月15日、月周回軌道から離脱し、月面への降下を開始しました。逆噴射による精密な減速を経て、月面のルモニエ・クレーター内部へ軟着陸を成功させました。

着陸後、ルノホート2号は本体から月面に降り立ち、探査活動を開始しました。まず着陸地点周辺を観測し、その後、移動しながら月面の地形や環境データを収集、大量の画像を撮影しました。月の夜間は活動を停止し、ポロニウムによる保温で乗り切りました。

成果と計画の終了

ルナ21号ミッションは、1973年6月4日に公式に終了が発表されました。この探査期間中、ルノホート2号は月面上を約37km走行しました。これは、当時の無人月面車による走行距離として非常に長い記録でした。また、8万枚を超える静止画像と86枚のパノラマ画像を含む、豊富なデータや画像を地球へ送信し、月の科学研究に大きく貢献しました。ルノホート2号のレーザー反射鏡は、探査活動終了後も地球からの距離測定に利用され続けました。

ルナ21号およびルノホート2号の成功は、ソビエト連邦の無人宇宙探査技術の進歩を示すと共に、その後の惑星探査における無人ローバーの有効性を実証する重要な成果となりました。

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