ルノー・カピュソン

ルノー・カピュソン（Renaud Capuçon）は、1976年にフランスに生まれた、現代を代表するヴァイオリニストの一人です。その演奏は、クリスチャン・テツラフなどと同様に、バロック時代の奏法に影響を受けたモダン楽器によるアプローチと、ポルタメントやテンポ・ルバートといったフランコ・ベルギー派のヴァイオリン伝統が見事に融合している点を特徴としています。

弟であるゴーティエ・カピュソンも著名なチェリストであり、兄弟での共演も多く行っています。

ルノー・カピュソンは、故郷であるシャンベリで幼少期を過ごした後、14歳でパリ国立高等音楽院に入学しました。そこでジェラール・プーレやヴェーダ・レイノルズに師事し、その才能を開花させます。1992年には室内楽、翌1993年にはヴァイオリン部門でそれぞれ最優秀にあたるプルミエ・プリを受賞し、早くからその実力を示しました。その後も研鑽を重ねるため、ベルリンでトマス・ブランディスに学び、さらに巨匠アイザック・スターンやシュロモ・ミンツからも指導を受けました。

初期のキャリアにおいては、1998年から2000年にかけて、指揮者クラウディオ・アッバードの指名によりマーラー・ユーゲント・オーケストラのコンサートマスターを務めたことが特筆されます。この期間、ピエール・ブーレーズをはじめとする著名な指揮者たちの下で貴重な経験を積みました。

彼の国際的な活動は、2000年代に入りさらに活発化します。2002年11月にはベルナルト・ハイティンク指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と、2004年7月にはクリストフ・フォン・ドホナーニ指揮のボストン交響楽団と相次いでデビューを果たしました。また、クリストフ・エッシェンバッハ率いるパリ管弦楽団とは、2004年11月に中国、2005年2月にはドイツへのツアーを行い、成功を収めています。これまでに、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめとする世界の主要なオーケストラにソリストとして多数客演しており、その活動範囲は世界各地に及んでいます。

カピュソンは、これまでに数多くの著名な音楽家たちと共演しています。指揮者ではシャルル・デュトワ、チョン・ミョンフン、フランス・ブリュッヘン、ダニエル・ハーディングなどが挙げられ、器楽奏者ではマルタ・アルゲリッチ、マリア・ジョアン・ピレシュ、ダニエル・バレンボイム、イェフィム・ブロンフマン、ミッシャ・マイスキー、エマニュエル・パユなど、錚々たる顔ぶれが並びます。特に指揮者のダニエル・ハーディングとは音楽的な親和性が高く、長年温めてきたプロジェクトである「屋根の上の牛」の録音や、シューマン、メンデルスゾーンの協奏曲の録音などを共に手掛けています。

使用する楽器にも彼の音楽へのこだわりが見られます。以前は、ヴァイオリニストのクライスラーがセカンド楽器として使用し、かつてはオーギュスタン・デュメイも弾いていた1721年製のストラディヴァリウスを使用していました。しかし、2005年12月以降は、スイス・イタリア銀行が彼のために購入した1737年製のグァルネリ・デル・ジェス「パネット」を愛用しています。この「パネット」は、20世紀を代表する巨匠ヴァイオリニスト、アイザック・スターンが生涯の約半世紀にわたり、その主要な録音のほぼすべてで使用した楽器として知られ、歴史的な価値を持つ名器です。

私生活では、ヴァイオリニストのバイバ・スクリデと婚約していた時期もありましたが、2009年にジャーナリストのロランス・フェラリと結婚しています。

ルノー・カピュソンは、伝統を踏まえつつも新しい解釈を取り入れた現代的な演奏で、世界の音楽シーンにおいて確固たる地位を築いています。その幅広いレパートリーと精力的な活動は、多くの聴衆を魅了し続けています。

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