ルルド

ルルド：聖母マリアの町とピレネー山脈の景観

フランス南西部のオクシタニー地域圏、オート＝ピレネー県に位置するルルドは、世界的に有名なカトリックの巡礼地です。1858年、ベルナデット・スビルーが聖母マリアの出現を目撃した地として知られ、以来、毎年600万人もの巡礼者や観光客が世界中から訪れています。その中には、約6万人の患者や病人を含む多くの信者もいます。

地理と歴史的背景

ルルドは標高約300メートルの場所にあり、隣接するプエイフェレというコミューンによって、北部と南部の2つの地区に分かれています。北部はムルルの森からなる飛び地で、ピレネー＝アトランティック県と接しています。南部にはルルドの町の中心部が広がっています。ピレネー山脈のふもとに位置するルルドは、歴史的なビゴール地方に属し、タルブの南西、ポー川沿いにあります。町の西側には、ポー川に沿って聖域が位置しています。

ルルドの町は、かつて城が築かれていた岩の頂上を中心に発展しました。この地は氷河によって形成された氷河盆地であり、最終氷期に形成された地形が今も残されています。町の中心部は、石灰岩の盛り上がりを活かした建設がされており、古い採石場も残っています。聖域を見下ろす山地には、サラザン洞窟やルー洞窟など、氷河の影響を受けたカルスト地形が見られます。

ルルドの歴史は古く、983年のサン・ペ大修道院建設の記録などにその痕跡を見ることができます。中世にはビゴール伯の居城があり、アルビジョア十字軍や百年戦争など、数々の歴史的出来事の舞台となりました。城は戦略的な要衝として、さまざまな勢力の支配を受けました。

16世紀から17世紀にかけては、ユグノー戦争による被害や疫病などの危機を経験しましたが、ルルドは地理的条件を巧みに利用し、温泉の治療地として栄えました。フランス革命期には、その戦略的な位置から革命軍に重要な役割を担いました。

聖母マリア出現と巡礼地としての発展

ルルドの歴史を大きく変えたのは、1858年の聖母マリアの出現です。ベルナデット・スビルーの証言に基づき、マサビエルの洞窟は聖地となり、多くの巡礼者が集まるようになりました。当初は地元の反対もありましたが、聖母の出現がタルブ司教によって公式に認定されると、ルルドは世界的な巡礼地へと発展しました。

聖域には、イマキュレ・コンセプション大聖堂やノートル・ダム・デュ・ロゼール大聖堂など、多くの教会が建設されました。町は巡礼者を迎えるために整備され、ホテルや商店などが建設されました。路面電車やロープウェイも整備され、交通アクセスが向上しました。

20世紀には、地下聖堂が建設されるなど、聖域はさらに規模を拡大し、現在ではファティマ、ローマ、チェンストホヴァ、グアダルーペと並ぶ世界有数のカトリック巡礼地となっています。ヨハネ・パウロ2世やベネディクト16世といった歴代ローマ教皇もルルドを訪れています。

経済と観光

ルルドの経済は、観光と巡礼が主要な柱となっています。年間600万人もの巡礼者や観光客が訪れるため、多くのホテルや関連施設が整備されており、パリに次ぐ国内第2位のホテル数を誇ります。ホテル数ではニースに次ぐ国内第3位です。聖域周辺には、巡礼者向けの商店やレストランなども多く存在します。観光客向け以外にも、この規模の都市で通常見られる商業や産業活動も盛んです。

考古学的発見

ルルド周辺からは、旧石器時代から現代までの広範囲にわたる歴史的遺物が発見されています。エスペリュグ洞窟では、旧石器時代の居住痕跡が見つかり、国立考古学博物館には、マンモスの牙から作られた「ルルドの馬」と呼ばれる彫像も展示されています。アルルーザ洞窟からは、新石器時代と青銅器時代の遺物が発掘されています。これらの発見は、ルルドが古くから人間の居住地であったことを示しています。

交通アクセス

ルルドへのアクセスは、オートルートA64やフランス国鉄ルルド駅を利用できます。TGVやTERなども停車し、国際的な巡礼者向けの列車も運行されています。また、タルブ・ルルド・ピレネー空港も近くにあります。オルリー空港、ブリュッセル空港、ロンドン・スタンステッド空港、ローマ・チャンピーノ空港からの直行便も運航されています。

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