ルワンダ紛争

ルワンダ紛争：民族対立と国際社会の影

1990年から1993年にかけて、アフリカ中央部のルワンダ共和国で発生したルワンダ紛争は、フツ族とツチ族という二大民族間の長年の対立が、内戦という形で爆発した悲劇的な出来事でした。この紛争は、武力衝突のみならず、和平協定後も続く民族間の対立や、1994年のルワンダ虐殺といった悲惨な出来事を含む、複雑な歴史的過程です。

紛争の前史：植民地支配と民族間の亀裂

フツ族とツチ族は、元々は同一言語を話す農耕民族と遊牧民族という程度の差異しかなく、明確な民族区分は存在しませんでした。しかし、ベルギーによる植民地支配が始まると、人種差別的な観念が持ち込まれ、ツチ族が支配層として優遇される一方、フツ族は抑圧されました。ベルギーは、ツチ族を「高貴なハム系」という虚偽の人種概念で優遇する一方、フツ族を「野蛮」と位置付けることで、民族間の対立を煽りました。1930年代にはIDカード制度が導入され、民族の固定化が進み、フツ族とトゥワ族への差別が制度化されました。

ルワンダ革命とフツ・パワーの台頭

1959年から1961年にかけて起きたルワンダ革命は、フツ族によるツチ族支配への反乱でした。ベルギー当局は、当初ツチ族を支持していましたが、植民地解放の機運の高まりと共に、多数派であるフツ族に立場を変え、フツ族による政権転覆を支援しました。この結果、多くのツチ族が近隣諸国へ逃亡しました。1962年のルワンダ独立後も、民族間の対立は消えず、政治・社会の不安定要因として残りました。

ルワンダ愛国戦線の結成と内戦の勃発

ウガンダに逃れたツチ族難民の中には、ウガンダ内戦で反政府軍に加わり、重要な役割を果たした者もいました。その中には、後にルワンダ愛国戦線(RPF)を結成し、ルワンダへの武力侵攻を計画したフレッド・ルウィゲマやポール・カガメも含まれます。1990年10月1日、RPFはルワンダ北部に侵攻し、内戦が始まりました。

アルーシャ協定とルワンダ虐殺

1993年8月4日、アルーシャ協定により和平合意が成立しましたが、これはあくまで表面的なものでした。1994年4月6日、フツ族大統領のハビャリマナが搭乗した飛行機が撃墜される事件が勃発し、フツ族によるツチ族への大規模な虐殺（ジェノサイド）が始まりました。このルワンダ虐殺は、世界を震撼させる大惨事となり、推定100万人もの人々が犠牲となりました。

紛争の拡大と国際社会の対応

ルワンダ虐殺は、ルワンダ紛争をさらに複雑化させました。ルワンダ愛国戦線が、ツチ族の保護を名目に、全土を制圧した後も、フツ族難民が大量発生し、近隣諸国に難民危機をもたらしました。また、この紛争は、第一次・第二次コンゴ戦争など、周辺諸国にも影響を及ぼし、アフリカ大湖地域全体を巻き込む大規模な紛争へと発展していきました。国際社会は、ルワンダ虐殺への対応が遅れたことや、紛争の拡大を阻止できなかったことなど、多くの批判を受けました。フランスの関与についても、様々な議論がなされています。

ルワンダ紛争のその後

ルワンダ紛争は、民族間の深い溝と国際社会の複雑な関与が絡み合った悲劇です。紛争の終結後も、民族和解への道のりは長く、ルワンダは現在もその傷跡と向き合っています。紛争の教訓は、民族対立の根源的な解決、そして国際社会による迅速かつ効果的な人道介入の重要性を改めて示しています。この歴史的事実を学ぶことは、今後の紛争防止に繋がる重要な一歩となるでしょう。

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