ル・ノルマン級フリゲート

ル・ノルマン級フリゲート：フランス海軍の多様な役割を担った護衛艦

ル・ノルマン級フリゲートは、フランス海軍が運用していたフリゲート艦級です。E-52型高速護衛艦の名称でも知られており、その改良型であるE-52B型も含まれます。本稿では、その設計、配備、運用、そして試験艦への転用などについて詳細に解説します。

設計：ル・コルス級を基盤とした改良型

ル・ノルマン級は、先行するル・コルス級（E-50型）をベースに設計されました。船体設計と主機関はル・コルス級を踏襲しつつも、対潜兵器の配置やレーダーシステムなどに改良が加えられています。

主機関は、過熱器付きインドレット式ボイラーとパーソンズ式またはラトー式蒸気タービンで構成されていました。蒸気条件は、圧力500 lbf/in2 (35 kgf/cm2)、温度385℃でした。

主な改良点は対潜兵器システムです。長魚雷発射管は艦首から上甲板中央部に移動され、6連装375mm対潜ロケット発射機も射界を拡大するため艦前方に配置変更されました。対空レーダーは、初期の艦ではDRBV-20A型が搭載されていましたが、後に改良型のDRBV-22A型に更新されました。

1955年以降に建造された3隻は、E-52B型としてさらに改良が加えられました。国産の4連装305mm対潜迫撃砲に換装された一方、6連装375mm対潜ロケット発射機は撤去されました。長魚雷発射管の再装填用弾庫も撤去され、重心の低下が図られました。艦橋構造物は拡大され、煙突頂部はストロンボス・ヴェレンシ型に変更されました。

配備：アメリカ合衆国の支援とフランス海軍の予算

ル・ノルマン級フリゲートは、1952年から1955年にかけて段階的に建造されました。最初の7隻は、アメリカ合衆国の相互防衛援助計画（MDAP）による資金援助を受けて建造されました。その後、フランス自身の予算によって、さらに7隻が建造されました。1957年度には2隻の建造が計画されていましたが、財政上の理由で中止されました。

運用と試験艦への転用：多様な任務への貢献

ル・ノルマン級は、建造後、フランス海軍において様々な任務に従事しました。1960年代中盤には、「ル・サヴォワヤール」、「ル・ブルトン」、「ル・バスク」の3隻が、潜水艦発射弾道ミサイル（MSBS）の試験支援のために改修を受けました。3番砲を撤去し、ミサイル追尾機器を搭載、艦橋構造物を拡大する改修が行われました。「ル・バスク」は、さらにオトマート艦対艦ミサイルの運用試験にも参加しました。

一方、「ル・アジュネ」は後部砲塔を撤去し、可変深度ソナーや曳航ソナーの試験に用いられました。艦種は試験艦（A 784）に変更されました。「ル・ヴァンデアン」も同様に試験艦となり、有線誘導魚雷の試験を行いました。これらの試験艦としての運用は、フランス海軍の技術開発に大きく貢献しました。

まとめ：時代を反映した多機能フリゲート

ル・ノルマン級フリゲートは、冷戦期のフランス海軍において重要な役割を果たした護衛艦でした。アメリカ合衆国の支援の下に建造が始まり、その後もフランス海軍の予算によって建造が続けられました。対潜能力を重視した設計でしたが、運用期間中にはミサイル試験や各種ソナー試験など、多様な任務に従事しました。試験艦として転用された艦艇もあることから、その技術開発への貢献も無視できません。ル・ノルマン級は、時代を反映した多機能なフリゲートであったと言えるでしょう。

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