ルートヴィヒ4世 (神聖ローマ皇帝)

ルートヴィヒ4世：波瀾万丈の生涯と神聖ローマ帝国

ルートヴィヒ4世（1281年/1282年 - 1347年 10月11日）は、神聖ローマ帝国の歴史において重要な人物です。ヴィッテルスバッハ家出身の彼は、1314年にローマ王に選出され、1328年にはローマで皇帝として戴冠しました。しかし、彼の治世は、教皇との激しい対立や複雑な政治闘争、そして大胆な領土拡大政策によって特徴づけられました。

王位継承と権力闘争

1314年、前ローマ王ハインリヒ7世の死後、ルートヴィヒ4世とハプスブルク家のフリードリヒ3世の二人がローマ王の座を争う二重選挙が行われました。両者は、先祖を同じルドルフ1世に持つ従兄弟同士という複雑な関係にありました。この対立は、それぞれの支持者たちによる武力衝突へと発展し、1322年のミュールドルフの戦いではルートヴィヒ4世が勝利し、フリードリヒ3世を捕縛しました。その後、1325年の妥協を経て、フリードリヒ3世は1330年の死まで共治王として地位を保ちましたが、その後はルートヴィヒ4世の単独統治となりました。

ルートヴィヒ4世の戴冠は、アヴィニョン捕囚期という特殊な状況下で行われました。ローマ教皇がアヴィニョンに拠点を移していたため、ローマ元老院議員によって戴冠式が執り行われたのです。このことは、教皇権に対するルートヴィヒ4世の挑戦的な姿勢を示唆しています。

領土拡大と教皇との対立

フリードリヒ3世を制圧した後、ルートヴィヒ4世は積極的な領土拡大政策を展開しました。彼は、長男にブランデンブルク辺境伯領を授与し、自らも戦略的な婚姻を通してホラント、エノー、ゼーラントの相続権を獲得しました。さらに、チロル伯領の獲得も試みました。これらの行為は、既存の勢力バランスを乱し、他の諸侯との緊張を高めました。

ルートヴィヒ4世の拡大政策は、教皇との対立をさらに激化させました。彼はアヴィニョンの教皇ヨハネス22世を異端として廃位し、対立教皇ニコラウス5世を支持しました。しかし、この行動は他の諸侯からの支持を得られず、ニコラウス5世はすぐに廃位され、ルートヴィヒ4世は孤立を深めました。

1338年のレンゼ協定は、ローマ王の選出に教皇の承認を必要としないことを宣言しました。この協定は、教皇権からの独立を希求する帝国内の勢力にとって大きな意味を持ちましたが、同時に教皇庁との対立を決定的なものとしました。

廃位と最期

ルートヴィヒ4世の教皇への反抗と強引な政策は、帝国諸侯からの支持を失うことになりました。イングランド王エドワード3世との同盟も、中立政策への転換によって解消しました。最終的に、1346年、教皇クレメンス6世によって廃位され、カール4世が対立王として擁立されました。反撃を試みたルートヴィヒ4世でしたが、翌1347年、ミュンヘン近郊で死去しました。

ルートヴィヒ4世の死後、彼の領地は子孫たちに分割相続されました。バイエルンは分裂し、チロルはハプスブルク家に奪われ、ブランデンブルク辺境伯領も後にカール4世に買収されました。これにより、ヴィッテルスバッハ家は一時的に弱体化しました。しかし、彼の治世は、神聖ローマ帝国における王権と教皇権の対立という重要な局面を示しており、後のドイツの歴史に大きな影響を与えました。

家族

ルートヴィヒ4世は、まずヤヴォル公ボルコ1世の娘ベアトリチェと結婚し、6人の子供をもうけました。その後、エノー伯、ホラント伯、ゼーラント伯ギヨーム1世の娘マルガレーテと再婚し、さらに10人の子供をもうけました。これらの子供たちは、後のバイエルンや周辺地域の支配者となりました。

参考文献

Auty, Auty; Bautier, Robert Henri; Angermann, Norbert (1991). “Beitrag von A. Schmid zu Ludwig IV. der Bayer” (ドイツ語). Lexikon des Mittelalters. 5(V). München ; Zürich: Artemis Verlag. pp. 2178-2181. ISBN 9783760889047