レア・グルーヴ

レア・グルーヴとは

レア・グルーヴ（Rare groove）は、直訳すると「珍しいグルーヴ」を意味します。1980年代後半に音楽ジャーナリズム、ディスコ、クラブシーンで注目されるようになった音楽ジャンルです。インターネットが普及する以前は、その希少性から見つけるのが困難な音楽とされていましたが、現在では音盤の再発やオンラインでの情報公開により、比較的容易に聴けるようになりました。

概要

レア・グルーヴは、過去の音楽を後年の価値観で捉え直す際に、当時は評価されなかった楽曲の価値が新たに見出される現象から生まれました。これらの楽曲は、新しい音楽シーンにおいて、音楽的な魅力と入手困難さという二つの点で希少価値を持ちます。新時代の価値観によって「踊れる、ファンキーである、グルーヴ感がある」と再評価された過去の楽曲が、レア・グルーヴと呼ばれています。

主にヒップホップやクラブミュージックの分野で多用される用語であり、1985年にKiss FMのDJ、ノーマン・ジェイ(Norman Jay)の番組「The Original Rare Groove Show」を通じて紹介されたことがその起源とされています。

代表的な例としては、1970年代にアメリカを中心に、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカで発表された、現在では比較的珍しく入手困難なファンク、R&B、ジャズファンク、ソウル、ソウルジャズ、アフロビート、ラテン音楽、ジャズ、クロスオーバーなどが挙げられます。現在では有名になった音盤以外にも、まだ未発見でレア・グルーヴとして再評価される可能性を秘めた過去の音盤が数多く存在します。また、ダンスミュージックとして認識されていなかった音楽が、レア・グルーヴとして発掘され、ダンスミュージックとして再評価されることもあります。

アメリカでは、DJクール・ハーク、グランドマスター・フラッシュ、アフリカ・バンバータらが70年代のレアグルーヴレコードをプレイしました。ジェームス・ブラウン、ジミー・キャスター・バンチ、インクレディブル・ボンゴ・バンドなどが彼らのプレイリストに含まれていました。また、ブートレッグシリーズ「Ultimate Breaks and Beats」は、人気のあるブレイクビーツのソースとして知られています。アメリカで最も長く続いているレアグルーヴのラジオ番組は、WWOZ 90.7 FM（ニューオーリンズ）とwwoz.orgの「Soul Power」（1996年開始）で、DJ SoulSisterが主催しています。

詳細

サンプリングはヒップホップとラップの重要な特徴の一つであり、ラップレコードでは、曲のブレイク部分でレアグルーヴなどの楽曲がサンプリングされています。例えば、Eazy-Eの「Eazy-Duz-It」では、デトロイト・エメラルズ、ブーツィー・コリンズ、ファンカデリック、アイズレー・ブラザーズ、スライ＆ザ・ファミリー・ストーン、テンプテーションズ、さらにはリチャード・プライアーなどの楽曲がサンプリングされています。現代のヒップホップ、特にG[[ファンク]]では、ファンカデリックの大量のサンプリングが顕著に見られます。

Schoolly Dは、アルバム「Am I Black Enough for You」（1989）で、ジェームス・ブラウン、リン・コリンズ、ザ・JB's、メイシオ＆マックなどのサンプルを使用しました。

1960年代半ばから1970年代にかけてのアメリカでは、ソウル、R&B、ファンク、ディスコなどの新しいブラックミュージックが誕生しました。ジェームス・ブラウンやパーラメント、スライ・ストーンなどの成功に影響を受け、多くのアフロアメリカンのローカルアーティストやインディーズレーベルが活発に活動していました。ジャズやクロスオーバーの分野でも同様に、インディー・メジャー問わず様々なレーベルやアーティストが活動していました。一部は全米規模の人気とセールスを記録しましたが、その多くは全米で流通することなく、忘れられた存在となりました。

1970年代のニューヨーク、サウスブロンクスでは、アフリカ・バンバータらがインクレディブル・ボンゴ・バンドの「アパッチ」を頻繁にプレイし、一種のアンセムのように扱っていました。

1980年代後半になると、イギリスのクラブDJやアメリカのヒップホップアーティストがレアグルーヴのレコードを積極的に探し求めるようになりました。クラブDJは、当時のレコードだけでは飽き足らず、新たな「ネタ」を求めて過去の音楽を探索しました。ヒップホップアーティストは、サンプリングの対象として過去の音源を日常的に利用しており、そのために過去の音盤を積極的に発掘（ディギング）しました。

両者に共通していたのは、アーティストや曲の知名度に関わらず、自分自身の価値観で楽曲に触れ、評価するという柔軟な姿勢でした。その結果、過去の音源をグルーヴという観点から再評価するムーブメントが起きました。これにより発掘された過去の楽曲が、レア・グルーヴと呼ばれるようになりました。現在では、よく知られたアーティストの曲であっても、アルバム中の佳作や忘れられた曲、シングルのB面など、これまであまり注目されていなかった楽曲もレア・グルーヴとして扱われています。また、現代の楽曲も年月が経てばレア・グルーヴとして見出される可能性があります。

レア・グルーヴの楽曲のリズムパートは、ヒップホップやハウスなどのジャンルで好んでサンプリングされています。また、同時代の楽曲に飽きたDJが、クラブで過去のレアグルーヴ曲をプレイすることもあります。

代表的なアーティストと曲

ジェームス・ブラウン - 「ギブ・イット・アップ・オア・ターン・イット・ルーズ」
インクレディブル・ボンゴ・バンド - 「アパッチ」
ジミー・キャスター・バンチ - 「イッツ・ジャスト・ビガン」
ザ・ヘッドハンターズ - 「ゴッド・メイク・ミー・ファンキー」
ホール・ダーン・ファミリー - 「セブン・ミニッツ・オブ・ファンク」
ロイC&ハニー・ドリッパーズ - 「インピーチ・ザ・プレジデント」
ターナ・ガードナー - 「ハートビート」
モホークス
ブラック・ヒート
スカル・スナップス/Skull Snaps
バンブルビー・アンリミテッド（パトリック・アダムス制作）
ユニバーサル・ロボット・バンド（同）
ハーマン・ケリー＆ライフ
ベイビー・ヒューイ
デトロイト・エメラルズ
TSモンク
ベイブ・ルース（バンド） - 「ザ・メキシカン」
ラファイエット・アフロ・ロック・バンド
サイマンデ

レア・グルーヴ・アーティスト

ジェームス・ブラウン
スライ・ストーン
パーラメント
ファンカデリック
ジョージ・クリントン
ブーツィー・コリンズ
メイシオ・パーカー
フレッド・ウェズリー
JBs
ボビー・バード
リン・コリンズ
ヴィッキー・アンダーソン
マーヴァ・ホイットニー
パーレット
ブライズ・オブ・ファンケンシュタイン
ロジャー・トラウトマン
ザップ
ヴォーン・メイソン＆クルー

関連項目

アフロビート
Pファンク
ラテン
ラテン・ジャズ
R&B
失われたメディア

外部リンク

Global Funk Radio internet funk radio（英語サイト）

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