レオニード・パステルナーク

レオニード・パステルナーク：ロシア印象派の先駆者

レオニード・オシポヴィチ・パステルナーク（1862年4月4日 - 1945年5月31日）は、ロシア帝国のポスト印象派画家であり、ウクライナ出身です。詩人ボリス・パステルナークの父親としても知られています。彼は、ロシアにおける印象派の先駆者として、その芸術的才能を発揮しました。

生涯

パステルナークは、オデッサでユダヤ人宿屋の末っ子として生まれました。幼少の頃から絵を描くことに熱中していましたが、家族は学業を優先させようとしました。しかし、7歳の時に町の洗濯屋が彼の絵を買い上げたことで、初めての支援者を得ることができました。この出来事が、彼の芸術への道を決定づけたと言えるでしょう。

1881年から1885年までモスクワ大学に在籍し、当初は医学部、後に法学部に編入しました。しかし、最終的には芸術への情熱を抑えきれず、1887年にミュンヘン美術アカデミーに留学し、本格的な美術教育を受けました。帰国後、2年間の兵役を経て、1889年にようやく画家としての活動に専念することができました。

画業のスタートは非常に幸先がよく、初めて展示した作品が当時ロシア最大の美術収集家であったパーヴェル・トレチャコフに買い上げられました。その後、彼は人気画家となり、「ポレノフ・サークル」の一員としてワシーリー・ポレーノフ、ワレンチン・セーロフ、イサーク・レヴィタンら著名な画家たちと交流を深めました。1889年にはピアニストのロザリンダ・カウフマンと結婚しています。

パステルナークは、自らを印象主義者であると宣言した最初のロシア人画家の一人です。1880年代から1890年代のロシアにおいて、その宣言は注目を集めるに十分でした。彼はまた、移動派やロシア美術家連盟のメンバーでもあり、1905年には帝国美術アカデミーの会員に選出され、モスクワ絵画・彫刻・建築学校で教鞭を執りました。

1921年、片眼の手術のためにベルリンへ移住しましたが、ロシアへ帰国することはなく、ベルリンに留まりました。その後、1938年にナチズムの脅威を逃れてイギリスに渡り、1945年にオックスフォードで生涯を閉じました。

トルストイとの交友

パステルナークは、文豪レフ・トルストイと家族ぐるみで親交がありました。彼は、トルストイの肖像画や小説の挿絵を数多く手掛け、しばしばトルストイの屋敷であるヤースナヤ・ポリャーナに滞在しました。息子のボリスは、父とトルストイの交流について「私の父は彼の本の挿絵を描き、彼に会いに行き、彼を尊敬し、そして...私の家全体が彼の精神を吹き込まれた」と述べています。

特に有名なのは、トルストイの小説『復活』の挿絵です。パステルナークは、法廷や刑務所、列車を観察してリアリズムに徹したスケッチを描きました。ボリスは、挿絵が完成するまでの様子を回想しており、当時の様子が目に浮かぶようです。また、パステルナークは『戦争と平和』にも挿絵を寄せており、1900年のパリ万国博覧会ではトルストイの小説のための挿絵が表彰されました。

マックス・ヘイワードによると、パステルナークはトルストイの臨終にも立ち会っています。トルストイが自宅を離れ、駅長の家で亡くなった際、パステルナークは電報でその知らせを受け、息子ボリスと共に駆けつけ、トルストイの最期の様子をスケッチしました。このことからも、パステルナークとトルストイの深い絆が伺えます。

パステルナークの作品は、印象派の影響を受けながらも、独自の写実性と繊細な表現が特徴です。彼は、ロシア美術史において重要な役割を果たし、その作品は今も多くの人々に愛されています。

註

外部リンク

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