レズギ人

レズギ人：コーカサス山脈の民族

レズギ人（lezgin）は、主にロシア連邦ダゲスタン共和国南部とアゼルバイジャン共和国北東部に居住する民族です。レズギ語を話す北東コーカサス地方の先住民であり、その歴史と文化は古く、複雑な様相を呈しています。本稿では、レズギ人の歴史、文化、言語、宗教、政治状況について詳細に解説します。

民族名の由来と関連民族

レズギ人という名称の起源については、未だ研究段階であり、明確な結論は出ていません。しかしながら、古代の「Legi」や中世初期の「Lakzi」といった名称との関連性が指摘されています。

レズギ人は、インド・ヨーロッパ語族の侵入以前からこの地域に存在し、北東コーカサス語族に属するレズギ語を母語としています。言語的、文化的にも、ダゲスタン南部のアグール人、ツァフル人、ルトゥル人、タバサラン人、そしてアゼルバイジャン北部のジェク人、クリツ人、ラク人、シャダフ人、ブドゥフ人、キナルグ人などとの密接な関係が認められます。これらの民族は、レズギ語話者として、サムール支族を形成しています。

歴史：古代から現代まで

レズギ人の歴史は古く、青銅器時代にはダゲスタン南部地域に住んでいたと推測されています。DNA分析の結果からは、過去4000年間に中央アジアの人々とかなりの混血があった可能性が示唆されています。

紀元前4世紀には、コーカサス東部地方のカフカス・アルバニア王国に統合された26部族の一つとしてレズギ語を話す部族が存在しました。この王国は、ペルシア、パルティア、ローマ帝国などの支配下に入り、様々な勢力抗争に巻き込まれることになります。

イスラム教の普及は8世紀頃から始まりましたが、15世紀までアニミズム信仰が中心でした。サファヴィー朝ペルシアの支配下では、著名なレズギ人としてファス＝アリ・ハン・ダヘスターニがいました。大宰相を務めた人物です。

18世紀後半からは、ロシア帝国の支配下に入り、19世紀にはコーカサス戦争に参加し、ロシア軍と激しく戦いました。ソ連時代には、スターリン政権による強制移住なども経験しています。

地理：山岳地帯と山麓地帯

レズギ人の居住地は、ダゲスタン南部とアゼルバイジャン北部の国境地域に集中しており、山岳地帯と山麓地帯にまたがっています。山岳地帯では、標高3500mを超える山々もあり、深い峡谷や地溝が特徴です。気候は夏は暑く乾燥し、冬は寒く風が強いのが特徴です。

一方、山麓地帯は比較的穏やかな気候で、畜産と農業が主な生業でした。

文化：音楽、舞踊、劇場

レズギ人の文化は豊かで、独特の音楽、舞踊、劇場が特徴です。特にレズギンカと呼ばれる舞踊は、コーカサス地方で広く知られています。活発な音楽と踊りは、レズギ人の文化を象徴するものです。1906年にはアフティの村で最初の劇場が設立され、その後、州立音楽ドラマ劇場が設立されるなど、演劇文化も発展してきました。

言語：レズギ諸語と方言

レズギ語は、北東コーカサス語族レズギ諸語に属し、クリン方言、アフティ方言、クバ方言の3つの主要な方言があります。クリン方言は最も広く話されています。

宗教：イスラム教スンニ派が中心

レズギ人の多くはイスラム教スンニ派ですが、ダゲスタンの一部地域にはシーア派も存在します。村落（hur）が社会の中心であり、モスクや村の集会所（Kim）が重要な役割を果たしています。

政治：アゼルバイジャンとダゲスタンにおけるレズギ人

レズギ人は、アゼルバイジャンとダゲスタンに居住しており、それぞれの地域で政治的な課題に直面しています。アゼルバイジャンでは、レズギ人のための文化的自治を求める運動があり、ダゲスタンでは、失業や貧困などが問題となっています。

人口：約70万人

レズギ人の総人口は約70万人と推定されています。そのうち、約47.4万人がロシア連邦、約18万人がアゼルバイジャン共和国に住んでいるとされています。しかし、アゼルバイジャン政府による統計は、実際の人口を過小評価している可能性があります。

まとめ

レズギ人は、長い歴史と独特の文化を持つ民族です。現代社会においても、様々な課題に直面していますが、その文化とアイデンティティを維持し、発展させていく努力を続けています。今後のレズギ人の動向に注目が必要です。

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