レッドストーン (ロケット)

レッドストーンシリーズ：アメリカの宇宙開発を支えたロケット

レッドストーンシリーズは、1950年代から1960年代にかけてアメリカ合衆国で開発・運用された一連のロケットです。その起源は、アメリカ初の大型ロケットであるPGM-11レッドストーン弾道ミサイルに遡ります。このミサイルを基盤として、観測ロケットや人工衛星打ち上げロケットなど、さまざまな派生型が誕生し、アメリカの宇宙開発史において重要な役割を果たしました。

PGM-11 レッドストーン

レッドストーンシリーズの原点となるのが、PGM-11 レッドストーンです。ヴェルナー・フォン・ブラウンらによって開発されたこのロケットは、単段式液体燃料ロケットであり、1953年に最初の打ち上げが行われました。1958年6月から1964年6月にかけては、短距離地対地弾道ミサイルとしてアメリカ陸軍に配備され、西ドイツにも展開されました。製造は、クライスラーがアメリカ陸軍弾道ミサイル局(ABMA)の委託を受けて行いました。

ジュピターA

ジュピターAは、レッドストーンの最初の派生型です。開発試験機材は、後に中距離[[弾道ミサイル]]であるPGM-19 ジュピターの開発にも転用されました。

ジュピターC

ジュピターCは、1956年から1957年にかけて使用された観測ロケットです。レッドストーンに2段の固体燃料ロケットを追加した3段式ロケットであり、3回の打ち上げが行われました。このロケットでの再突入試験の結果は、PGM-19 ジュピター・ミサイルの開発に活用されました。

ジュノーI

ジュノーIは、ジュピターCの派生型で、さらに一段を追加した4段式ロケットです。1958年1月31日には、アメリカ初の人工衛星であるエクスプローラー1号の打ち上げに成功しました。当初、アメリカはソ連よりも早く人工衛星を打ち上げることを目指していましたが、アイゼンハワー委員会は、軍用ミサイルではなく文民が開発したロケットを使用することを決定。ヴァンガードロケットの開発が始まりましたが、1957年12月の打ち上げ失敗を受け、委員会はABMAとフォン・ブラウンに予備の衛星打ち上げを要請しました。ジュノーIは、この要請に対応し、迅速に開発されました。

マーキュリー・レッドストーン

マーキュリー・レッドストーンロケット(MRLV)は、ジュピターCを基に開発されたロケットで、上段部に宇宙船を搭載するために全長が長くなっています。マーキュリー計画において、1960年から1961年にかけて6回の弾道飛行に使用され、アメリカ初の有人宇宙飛行も2回含まれます。

以下が、マーキュリー・レッドストーンロケットによる主な打ち上げです。

マーキュリー・レッドストーン1号: 打ち上げ中止（約100mm浮上）
マーキュリー・レッドストーン1A号: 無人飛行に成功
マーキュリー・レッドストーン2号: チンパンジーのハムを搭載した飛行に成功
マーキュリー・レッドストーンBD: ブースター開発のための最終打ち上げ
マーキュリー・レッドストーン3号（フリーダム7）: アメリカ初の有人宇宙飛行（アラン・シェパード搭乗）
マーキュリー・レッドストーン4号（リバティーベル7）: アメリカ2回目の有人宇宙飛行（ガス・グリソム搭乗）

サターン

サターンロケットシリーズ（サターンIとIB）も、レッドストーンの派生型です。レッドストーンとジュピターミサイルの推進剤タンクを束ね、8基のジュピターエンジンをロケットの1段目に使用しています。初期開発はABMAが担当し、後にNASAのアポロ計画へと引き継がれました。サターンロケットは、アメリカ初の重量物打ち上げロケットとして、1961年に初打ち上げが行われました。

スパルタ

スパルタロケットは、1966年から1967年にかけてアメリカ、イギリス、オーストラリアが共同で実施した研究計画で、レッドストーンミサイルに2基の固体燃料上段を搭載したものです。スパルタは、WRESAT衛星を打ち上げ、オーストラリア初の人工衛星打ち上げに成功しました。

レッドストーンシリーズは、その多様な派生型を通じて、アメリカの宇宙開発を初期段階から支え、有人宇宙飛行や衛星打ち上げの礎を築いた重要なロケットシリーズと言えるでしょう。

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