レッド・スペシャル

レッド・スペシャル：ブライアン・メイの魂が宿るギター

レッド・スペシャルは、イギリスのロックバンド、クイーンのギタリストであるブライアン・メイが、1960年代初頭に父親ハロルド・メイと共に製作したエレクトリックギターです。ブライアンの音楽活動を初期から支え続けているメインギターであり、その独特な仕様とサウンドは、世界中のギタリストから愛されています。

製作の背景

レッド・スペシャルは、約2年の歳月をかけて製作されました。1963年8月に製作が開始され、ブライアンとハロルドは週末などの時間を利用して作業を進めました。ボディには、ランバーコア（ブロックボード）と、家具に使われていたホワイトオークの机が用いられ、ネックには、友人の家で廃棄される予定だった、100年以上前の暖炉に使われていたマホガニーなどの古材が使用されています。新規に購入したものはペグ程度で、ピックアップもオリジナルのものが搭載されました（現在はバーンズ・トライソニック製）。

ブライアンは、現在に至るまで、レッド・スペシャルに様々な改良やメンテナンスを施しています。ピックアップに関しては、コイルの巻き直しは行わず、ハウリング防止のために内部をアラルダイトで充填したとされています。

サウンドの特徴

レッド・スペシャルは、ジョン・ディーコンが製作した「ディーキーアンプ」と組み合わせることで、ヴァイオリンのような独特の音色を出すことができます。また、多重録音によってシンセサイザーのような音を作り出すことも可能なため、初期のクイーンのアルバムには「No Synthesizers」という注意書きが記載されていました。

ボディはワインレッドですが、『ウィ・ウィル・ロック・ユー』のミュージックビデオでは、ナチュラルカラーのレプリカが使用されました。一見ソリッドギターのように見えますが、ボディの左右には大きな空洞があり、フィードバック奏法が容易に行えるようになっています。ブライアンは「フィードバックを目的としたギターを作ったのは、自分が世界初ではないか」と語っています。

セミホローボディ構造、ネックがブリッジとミドルピックアップの間に接続された超ディープジョイント、約150年前の古材など、様々な要素が組み合わさることで、非常にユニークなサウンドを生み出します。また、ピックとしてイギリスの6ペンス硬貨を使用することも、独特のサウンドに貢献しています。なお、ネックが太いのは、指板の厚みを計算に入れ忘れたためです。

完成時にはファズ回路が搭載されていましたが、後に取り外されました。スイッチの穴を塞ぐために、ピックガードに赤いシールや黒いテープが貼られていましたが、現在は貝殻のインレイで埋められています。

3つのピックアップには、それぞれオン/オフスイッチと位相切り替えスイッチがあり、3つ全てが直列配線されています（通常は並列配線）。ブライアンは、当時一般的なギターの配線方法を知らず、様々な接続を試した結果、直列配線が最も良い音だったと語っています。

現在搭載されているバーンズ・トライソニックのピックアップは、シングルコイルとハムバッキングの中間のパワーを持つと評されることが多いですが、実際にはシングルコイルと同程度のインピーダンスです。しかし、リアとセンターピックアップを直列接続するセッティングを頻繁に使用するため、擬似的なハムバッキング状態となり、独特のサウンドを生み出しています。

24フレットのネック、24インチのショートスケール、ローラーブリッジ、0フレットの採用など、ブライアンの演奏性と音楽的センスが随所に活かされています。

コピーモデルについて

クイーンの活躍と共に、レッド・スペシャルは世界的に知られるようになり、多くのコピーモデルが製造されるようになりました。グレコやKid'sギター、RS Guitarsなど、非公認のコピーモデルが多数存在します。1976年に発売されたグレコの「BM-900」は、ブライアン本人に贈られ、『懐かしのラヴァー・ボーイ』のミュージックビデオで使用されました。

1980年代初頭まで、ブライアンはジョン・バーチ製のナチュラルフィニッシュのコピーモデルをサブとして使用していました。しかし、ブライアン監修での製造は、1983年から3年程度で打ち切られました。

公認モデルとしては、イギリスの楽器メーカー、バーンズが2001年から製造を開始しました。2006年からは、ブライアン自身の名前を冠した『Brian May Guitars』ブランドがバーンズの生産を引き継ぎ、現在も廉価モデルとして販売されています（高額モデルも存在します）。

THE ALFEE|THE_ALFEEの高見沢俊彦は、バーンズ製だけでなく、ESP製のコピーモデル（ボディカラーはオフホワイト、ブリッジはフロイド・ローズ）を所有しており、クイーンの楽曲演奏時に使用しています。

神奈川県逗子市のギター工房・ケイズ・ギターワークスの代表、伊集院香崇尊も、レッド・スペシャルの公認モデルを販売しています。伊集院は、レッド・スペシャルを世界で初めて修復したグレッグ・フライヤーを通じてブライアンの認可を得ており、2001年にギター工房を設立、2005年にグレッグ・フライヤーと共同で最初の公認モデルを開発しました。

まとめ

レッド・スペシャルは、ブライアン・メイの創造性と音楽的探求心が生み出した、唯一無二のギターです。その独特なサウンドと歴史は、多くのギタリストを魅了し、今なお語り継がれています。

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