ジョン・ディーコン

ジョン・ディーコン：クイーンを支えた知性と温厚さ

ジョン・リチャード・ディーコン（John Richard Deacon）は、1951年8月19日生まれのイギリスのベーシストです。彼は、伝説的なロックバンド、クイーンのメンバーとして世界的に知られています。

クイーンへの加入と人物像

ディーコンは、クイーンのメンバーの中で最年少であり、最後に加入しました。1971年にバンドに加わった彼は、温厚で穏やかな性格で、メンバー間の衝突を幾度となく収めたとされています。また、ビジネス面でも重要な役割を果たし、バンドの運営に貢献しました。

担当楽器はベースですが、ギター、ピアノ、キーボード、シンセサイザーなど、多くの楽器を演奏できるマルチプレイヤーでもあります。彼の音楽的な才能は、クイーンのサウンドに深みを与えました。また、クイーンのメンバーの中で最も多くの子を儲けたことでも知られています。

ディーコンは、ボーカリストであるフレディ・マーキュリーを尊敬しており、「クイーンのボーカルはフレディ以外には考えられない」と度々発言していました。フレディの死後、クイーンとしての活動にはほとんど参加していません。彼は多くの楽曲を提供しましたが、自身が歌うことはほとんどありませんでした。それは、彼自身が「自分は音痴だ」と語っていたことにも起因しています。

また、ディーコンは、フレディと彼のパートナーであるジム・ハットンの関係性について最も理解を示していました。バンド時代には、ドラマーのロジャー・テイラーとはプライベートでも親交が深く、特に1980年代には家族ぐるみで交流していました。

さらに、電子工学の学位を持つディーコンは、機械にも精通していました。彼は、ギタリストのブライアン・メイのためにエフェクターやアンプを作製・改造するなど、技術的な面でもバンドに貢献していました。中でも、メイが使用していた「DEACY AMP（ディーキー・アンプ）」は、独特のサウンドを生み出す上で重要な役割を果たしました。

音楽への目覚めとクイーン加入まで

ディーコンは、レスターシャーのオードビーで育ちました。7歳の時に両親からおもちゃのギターを買い与えられたことから音楽に興味を持ち始めました。音楽と並行して機械いじりにも興味を示し、無線装置などで遊んでいたと言います。新聞配達で稼いだお金でアコースティックギターを購入し、本格的な音楽活動をスタートさせました。

14歳で「ジ・オポジション」というバンドにリズムギターとして加入しましたが、その後ベーシストが脱退したため、ベースに転向しました。バンドは「ザ・ニュー・オポジション」、さらに「ジ・アート」と名前を変えながら活動を続けました。ディーコンがロンドン大学のチェルシー・カレッジ電子工学科に入学するまで、バンド活動は続きました。

大学では学業に専念し、首席で卒業、名誉学位を授与されました。大学在籍中にもバンド活動を行いましたが、数回で終わってしまい、その後いくつかのバンドのオーディションを受けましたが、すべて落選しました。1971年1月、友人の紹介でブライアン・メイとロジャー・テイラーに会い、ベーシストを探していたクイーンのオーディションを受け、採用されました。ディーコンの温厚な人柄と機械への強さが、採用の決め手になったと言われています。ディーコンのクイーンへの正式加入は1971年3月1日とされています。

クイーンでの活躍

クイーンでは、ボーカルを担当することがなかったことや、バンド内で最年少だったこともあり、当初ディーコンの存在感は薄かったかもしれません。しかし、3枚目のアルバム『シアー・ハート・アタック』に収録された「ミスファイアー」で初めて自作曲が採用され、4枚目のアルバム『オペラ座の夜』では「マイ・ベスト・フレンド」が全英7位、全米16位のヒットを記録しました。

その後も、アルバムごとに自作曲を提供し続け、「地獄へ道づれ」（全米1位、全英7位）、「ブレイク・フリー (自由への旅立ち)」（全英3位）など、クイーンの代表作となる楽曲を数多く発表しました。また、前述のギターアンプ「Deacy（ディーキー）」などを制作し、その学歴を生かしてバンドに貢献しました。

デビューアルバム『戦慄の王女』では「ディーコン・ジョン」とクレジットされましたが、これは響きが良いという理由でメンバーが判断したものです。その後、ディーコンが本名でのクレジットを要求したことから、セカンドアルバム以降は元の表記に戻っています。

ディーコンが最初に手にしたベースギターは、オポジション時代のエコーでしたが、後にリッケンバッカー4001を使用。クイーンではフェンダー・プレシジョン・ベースを主に使用し、後期にはカスタムベースも使用しました。

ソロ活動とフレディ・マーキュリー死後の活動

ディーコンは、ボーカルを担当することがなかったため、他のメンバーのようにソロアルバムを発表することはありませんでした。しかし、1983年には「MAN FRIDAY and JIVE JUNIOR」名義で「Picking Up Sounds」を、1986年には「The Immortals」名義で「No Turning Back」を発表しました。

フレディ・マーキュリーの死後は、音楽活動に消極的になり、追悼コンサートの参加にも当初は否定的でした。しかし、メンバーの説得により参加を決意し、フレディの死後、クイーンとして3回舞台に立ちました。また、アルバム『メイド・イン・ヘヴン』や『クイーン・ロックス』、ミュージカル「ウィ・ウィル・ロック・ユー」にも参加しました。

引退とその後

1997年以降、表舞台に出ることがなくなり、引退の真相は不明でしたが、2004年にロジャー・テイラーが「ジョンは事実上引退している」と発言しました。クイーンの広報担当者によると、ディーコンはバンドが運営する事業の株主であり、引退後は静かに暮らしていると言います。

ブライアン・メイは「今の生活は彼が選んだこと」と語り、テイラーも「一切音沙汰がない」と述べています。ディーコンは、元々表舞台に出るのが苦手で、音楽業界の騒がしさにストレスを感じていたようです。

近年では、著作権使用料と「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の成功により、経済的に安定した生活を送っているとされています。また、一時的に自身のページを開設したり、ファンサイトに書き込みをすることもありました。2014年には、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の初期段階の脚本を読んで映画化の許可を出しましたが、制作には関わりませんでした。

ディスコグラフィー

ジョン・ディーコンが作曲したクイーンのシングルには、「マイ・ベスト・フレンド」、「地獄へ道づれ」、「ブレイク・フリー (自由への旅立ち)」などがあります。また、その他のアルバム収録曲には、「ミスファイアー」、「ユー・アンド・アイ」、「クール・キャット」などがあります。

ソロ作品としては、「ピッキング・アップ・サウンズ」や「ノー・ターニング・バック」などを発表しています。

ジョン・ディーコンは、クイーンという伝説的なバンドを支え、音楽史に名を刻んだ重要な人物の一人です。彼の音楽的な才能と温厚な人柄は、多くの人々に感動を与え続けています。

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