レナード・ペナリオ

レナード・ペナリオ：早熟の天才ピアニストの生涯と音楽

レナード・ペナリオ（Leonard Pennario, 1924年7月9日 - 2008年6月27日）は、アメリカ合衆国出身のピアニストです。ニューヨーク州バッファローで生まれ、ロサンゼルスで育ち、その地で音楽活動を全うしました。

神童の誕生

12歳という若さで、グリーグのピアノ協奏曲をダラス交響楽団と共演し、神童としてその名を轟かせました。当初予定されていたピアニストの病気により、急遽代役として抜擢されたのです。ユージン・グーセンスは、かねてよりペナリオの才能に注目しており、本人がこの難曲を理解していると明言したこともあり、彼を推薦しました。驚くべきことに、ペナリオはこの時までグリーグの協奏曲を聴いたことも弾いたこともありませんでしたが、わずか1週間で暗譜して演奏を成功させたといいます。

音楽の研鑽と戦争による中断

イサベル・ヴェンゲーロワとオルガ・スティーブに師事し、ピアノの腕を磨きました。また、南カリフォルニア大学ではエルンスト・トッホに作曲を学び、音楽家としての素養を深めました。しかし、第二次世界大戦の勃発により、米国空軍に配属され、音楽活動を一時中断せざるを得なくなります。航空部隊の一員として中国、ビルマ、インドを転戦する中で、彼のピアニストとしての才能は広く知られるようになり、慰問団に加わって兵士たちのために演奏を行いました。その功績が認められ、1946年には青銅星章を授与され、将校として除隊しました。公式デビューは従軍中の1943年11月17日、アルトゥール・ロジンスキ指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団との共演で、リストのピアノ協奏曲第1番を演奏しました。

ラフマニノフとの繋がり

ラフマニノフの死後間もなく、指揮者のディミトリ・ミトロプーロスに招かれ、追悼演奏会でソリストを務めました。ミネアポリス交響楽団とともにラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏し、聴衆を感動させました。ペナリオは、ラフマニノフ本人以外で、ラフマニノフのピアノ協奏曲全曲とパガニーニ狂詩曲の録音を完成させた最初のピアニストとして、その名を知られています。彼の演奏は、ジョーン・フォンテイン主演の映画「旅愁」にも使用され、その美しい旋律が映画を彩りました。

アンサンブル活動と晩年

1960年代初頭には、ヤッシャ・ハイフェッツ、グレゴール・ピアティゴルスキーとともにピアノ三重奏団を結成し、室内楽の分野でも才能を発揮しました。ミクローシュ・ロージャにピアノ協奏曲を献呈され、ズービン・メータ指揮ロサンジェルス・フィルハーモニックとの共演で初演を行いました。60枚以上のLPをリリースし、その多くはショパン以降の作品です。同時代の作曲家では、ラフマニノフ、バルトーク、ガーシュウィン、プロコフィエフ、ロージャを得意とし、また、ゴットシャルクの作品の擁護者としても知られていました。1958年には、ヴァルター・ギーゼキングと並んで、最もレコードが売れるピアニストの一人でした。自作曲としては、映画「影なき恐怖」（Julie, 1956年）の挿入音楽「真夜中の断崖」（Midnight on the Cliffs）が知られています。

1990年代に演奏活動から引退しましたが、バッファロー名誉音楽ホール（the Buffalo Music Hall of Fame）の開館（2007年10月）に影響を与えたと言われています。2008年6月、パーキンソン病の合併症により83歳で逝去しました。

室内楽における協調性

エーリヒ・ラインスドルフ、ウラジミール・ゴルシュマン、小澤征爾、アンドレ・プレヴィンら、著名な指揮者との共演で数々の協奏曲の録音を残しました。室内楽においては、一転して協調性を発揮し、他の独奏者よりも控えめに振る舞う傾向があり、ハイフェッツやピアティゴルスキーらに共演相手として好まれました。そのうちの一つは1962年にグラミー賞を獲得しています。

知られざる一面

ペナリオは、音楽家としてだけでなく、ブリッジのライフマスターの称号を持つほどの腕前であり、「ブリッジ公式百科事典（The Official Encyclopedia of Bridge）」にも競技者として名を連ねています。かつては、ドン・アダムズ、レス・ブラウン、ジョーン・ベニー（ジャック・ベニーの娘）とともに、名士四人組でブリッジを楽しんだこともありました。

レナード・ペナリオは、その早熟な才能と音楽への情熱、そして多才な趣味を通じて、多くの人々に感動を与えた偉大なピアニストでした。

もう一度検索