レーション

レーション（戦闘糧食）とは

レーション（英: field ration）とは、軍隊において兵士が戦地や訓練中に携行・摂取する食料のことです。コンバット・レーション（英: combat ration）とも呼ばれ、日本語では野戦食、戦闘食、戦闘糧食、野戦糧食、戦用糧食、携帯口糧など、様々な名称があります。一般に払い下げられたものは「ミリメシ」という俗称で呼ばれることもあります。

レーションの概要

古来より、軍隊における食料確保は兵士の士気に直結する重要な要素でした。現代のレーションは、過酷な輸送環境に耐えうる保存性、十分な摂取カロリー、そして食味に重点を置いて開発されています。

レーションの多くは、1食分の主食・副食が1つのパッケージに収められています。スプーンなどの簡素なカトラリーが付属することもあります。中身は、缶詰、レトルト食品、密封包装されたクラッカーやパンなど、加熱不要で手軽に食べられるものが主流です。また、固形燃料や生石灰を用いた発熱剤が付属し、温かい食事が摂れるよう工夫されているものもあります。チョコレート、ガム、飴などの菓子類が付属していることもあり、兵士の士気向上に役立っています。

災害派遣時には、軍隊が民間人へレーションを配布するケースや、日本赤十字社が軍用レーションに類似した保存食セットを被災者へ配布するケースもあります。

レーションの歴史

食料問題は、古くから軍事活動を制約する要因でした。特に遠征においては、兵站による食料補給が重要となります。

中世ヨーロッパでは、兵士に食料が現物支給されるのではなく、食費が金銭で支給され、兵士は酒保商人から食料を調達していました。

ナポレオン・ボナパルトは、「軍隊は胃袋で動く」という言葉を残し、食糧供給の重要性を訴え、常温で長期保存可能な食品の開発を奨励しました。その結果、1804年にフランスのニコラ・アペールが加熱殺菌済みの瓶詰を開発しましたが、輸送時の破損が課題でした。1810年には、イギリスのピーター・デュランドが金属製の密閉容器（缶詰の原型）を考案しました。

当初の缶詰は、蓋をハンダ付けしたもので、缶切りが存在しなかったため、鑿や金槌、斧などで無理やり開けていました。後に缶切りが発明され、缶詰は兵士向けのレーションとして普及しましたが、「空き缶が発見されやすい」「メニューが単調で飽きやすい」という課題がありました。

本格的なレーションが開発されたのは、第二次世界大戦前のアメリカ合衆国です。Cレーション（缶詰を箱詰めしたもの）とDレーション（固形食糧を密封したもの）が開発され、長期保存と輸送に配慮されました。

2000年代以降は、携帯性、ゴミの少なさ、痕跡の残りにくさを重視したレトルト食品や、軽量化・耐寒性を重視したフリーズドライ食品が主流となっています。メニューも多様化し、娯楽性が向上。食品加工技術の進歩により、保存期間も延長されています。

各国のレーション

各国のレーションは、その国の食文化、気候、軍の事情を反映した多様な形態があります。

カナダ：豊富なメニュー
フランス：味に特化（市販品や民族料理を多用）
イギリス：ティータイムを重視
日本：米飯と副食・漬物の組み合わせ
中国・ロシア：温かい食事が摂れる工夫
ノルウェー：高カロリー（最大7,500kcal）
イタリア：厳重な真空パック、ワインやデザートも用意
韓国：発酵ガス対策を施した白菜キムチ

レーションに関連する事柄

レーション開発の技術は、宇宙食や災害備蓄食料にも応用されています。災害備蓄食料は、被災者の心理的ダメージを軽減するため、味や温かさに改良が加えられています。

軍用レーションは、払い下げ品として市場に流通することがあります。しかし、横領などの犯罪行為による入手や、保存期間切れによる食中毒のリスクがあるため、購入には注意が必要です。

スパムとチョコレート

スパムは、第二次世界大戦以降、アメリカ軍兵士の食料として多用され、沖縄など米軍基地のある地域で消費される食文化が生まれました。

レーションでは、カロリー補給のためチョコレートが多用されます。アメリカ軍のハーシーズ・トロピカル・バーは、熱帯でも溶けないように作られましたが、「美味であると、必要な状況になる前に食べてしまうから」という理由で、味は二の次とされました。日本では、航空自衛隊が井村屋と共同で、羊羹をベースにした耐熱性の高いJASDF羊羹を開発しています。

アーミーナイフ

兵士に支給されるアーミーナイフには、レーションを開封するための缶切り・栓抜きが必ず付属しています。近年ではプルトップ缶やレトルトパウチが主流ですが、空中投下に耐えるため、あえて缶切りが必要な缶詰を使用するケースもあります。

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