ロイ・チャップマン・アンドリュース

ロイ・チャップマン・アンドリュース：冒険に生きた探検家

ロイ・チャップマン・アンドリュース（1884年1月26日 - 1960年3月11日）は、20世紀初頭に中国、特にゴビ砂漠やモンゴルを探検し、多大な功績を残したアメリカ合衆国の探検家であり、博物学者です。彼はアメリカ自然史博物館の館長も務め、数々の重要な発見をしました。

生い立ちと初期の探求心

1884年、アンドリュースはウィスコンシン州ベロイトで生まれました。幼少の頃から自然に親しみ、森や野原、水辺を探検し、射撃の腕を磨きました。独学で剥製の技術を習得し、ベロイト大学ではSigma Chi友愛会に所属しました。大学在学中には、ロックリバーでの川下り中にボートが転覆する事故に遭遇し、友人を失うという悲しい経験もしています。

大学卒業後、アンドリュースは剥製製作で貯めた資金を元に、アメリカ自然史博物館での職を求めてニューヨークへ向かいました。彼は剥製部門の研究員として採用され、展示用の標本収集に奔走しました。研究にも励み、コロンビア大学で哺乳類学の修士号を取得しています。

探検家としてのキャリア

1909年から1910年にかけて、アンドリュースはアメリカ海軍のUSSアルバトロス号に乗船し、西インド諸島でヘビやトカゲの採集、海棲哺乳類の観察を行いました。1914年にはイヴェット・ボーラップと結婚し、1916年から1917年にかけて夫婦で中国各地を探検し、アジア地域の哺乳類を収集しました。この時の探検の様子は、著書「Camps and Trails in China」にまとめられています。

1920年、アンドリュースはダッジの自動車で北京から西へ向かい、モンゴル探検の計画を立てました。1922年には、角のない巨大なサイ、インドリコテリウムの化石を発見。この化石は博物館に送られ、大きな話題となりました。

アンドリュースは、当時の博物館館長であったヘンリー・フェアフィールド・オズボーンが提唱した「人類アジア起源説」を証明するため、1922年から1930年にかけて「中央アジア探検隊」を率い、ゴビ砂漠で人類の化石を探索しました。探検隊は人類の化石を発見することはできませんでしたが、恐竜の骨や哺乳類の化石など、数々の重要な発見を成し遂げました。

1923年7月13日、探検隊は世界で初めて恐竜の卵の化石を発見しました。当初はプロトケラトプスのものと考えられていましたが、後にオヴィラプトルのものであることが判明しました。また、ウォルター・グレンジャーは白亜紀の地層から哺乳類の頭蓋骨化石を発見し、博物館にその価値を認められました。1928年には発見された化石が中国政府に一時押収されるなどの困難もありましたが、後に返還されました。

1930年の最後の探検で、アンドリュースはマストドンの化石を発見しました。これらの化石は、アンドリュースの最初の探検から60年後、モンゴル政府の要請に応じてアメリカ自然史博物館からモンゴルに返還されました。

その後

1934年、アンドリュースはアメリカ自然史博物館の館長に就任しました。1935年に出版した著書「The Business of Exploring」の中で、彼は「私は探検家になるために生まれてきた…探検家になるにあたって選択の余地はなかった。私は他に何もできないが、幸せである」と述べています。1942年に隠居し、自伝の執筆を行いました。1960年に亡くなり、故郷のベロイトにあるオークウッド墓地に埋葬されました。

アンドリュースの探検は、数々の困難と危険に満ちたものでしたが、彼の勇気と探求心は、多くの人々に感銘を与え続けています。彼の冒険譚は、インディアナ・ジョーンズのモデルの一つになったとも言われています。

著書（日本語訳）

『恐竜探検記』 斎藤常正 監訳、加藤順 訳、河出書房新社〈世界探検全集〉、1978年、新版（木村由莉 解説）2023年
『恐竜探検記』 小畠郁生 編訳・解説、小学館〈地球人ライブラリー〉、1994年

伝記

* 『ドラゴンハンター　ロイ・チャップマン・アンドリューズの恐竜発掘記』技術評論社、 2006年
チャールズ・ガレンカンプ／マイケル・J.ノヴァチェック、岩井木綿子・中村安子・藤村奈緒美訳

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