ロシュフォール襲撃

ロシュフォール襲撃：七年戦争におけるイギリスの奇襲作戦

ロシュフォール襲撃は、七年戦争中の1757年9月にイギリスがフランスのロシュフォール港を攻撃した作戦です。当時就任したばかりのウィリアム・ピットが立案した「フランス海岸への急襲」という戦略の主要なものでした。

背景

七年戦争の初期、イギリスは北米での戦闘でフランスに敗北し、地中海の軍事拠点であるミノルカ島もフランスに占領されました。さらに、ハノーファーも侵攻の危機に瀕していました。こうした状況を受け、イギリスでは政権交代が起こり、1757年7月にウィリアム・ピットが率いる新政権が発足しました。

ピットは、フランスの大軍をドイツへの侵攻から引き離し、海岸防衛に集中させることを目指しました。また、イギリス国内では、大衆がフランスへの攻撃を支持する声が高まっていました。同盟国のプロイセン王フリードリヒ2世も、フランスからの圧力を軽減するためにイギリスの襲撃を支持し、プロイセン軍とカンバーランド公の軍を支援することを強く訴えました。

工兵隊のロバート・クラークは、ロシュフォール要塞の防御が不十分であり、イギリスの奇襲に弱いと指摘しました。ピットは、遠征の許可を得るためにジョージ2世とニューカッスル公爵に掛け合いましたが、彼らは襲撃の実現可能性に懐疑的でした。ハノーファーの状況が悪化するにつれて、彼らは襲撃の目標をドイツのシュターデに変更することを求めましたが、ピットはこれを拒否しました。

遠征の準備

ジョン・モードントが上陸軍の指揮官に任命され、エドワード・コーンウォリスとヘンリー・シーモア・コンウェイが副官に選ばれました。エドワード・ホークが艦隊の指揮官に選ばれ、ジェームズ・ウルフ大佐が需品科将校に任命されました。

遠征軍は1757年7月から8月にかけてワイト島に集結しましたが、出発は何度も延期されました。士官と8000人の兵士がニューポートに野営しましたが、遠征の目的地は最高位の士官を除いて秘匿されました。

1か月遅れて、イギリス軍は9月7日に出港し、ビスケー湾に向かいました。20日にはロシュフォール沖に到着しましたが、濃霧のために数日間上陸できませんでした。ホークら海軍士官は、秋の到来とともに天候が悪化し、荒波が押し寄せることを懸念しました。

上陸と作戦の頓挫

ユグノーのジョゼフ・ティエリという水先案内人に導かれ、イギリスの戦艦がロシュフォールの玄関口であるエクス島の要塞に接近し、2時間にわたる砲撃の末に降伏させました。

ウルフはエクス島からフランス本土を観察し、フーラ砦の砲台がシャラント川の河口を守備していることを確認しました。フランスはイギリスの侵攻を予想しておらず、イギリス艦隊の突然の出現に混乱しました。ウルフはフーラ砦への急襲を強く主張し、ラ・ロシェルへの陽動も提案しました。モードントはフーラ砦への攻撃に同意しましたが、近くの海域が浅すぎてホーク艦隊が接近できず、艦砲射撃による援護ができないため、攻撃を取り消さざるを得ませんでした。

9月25日、モードントは作戦会議を開き、ロシュフォール砦が脆弱であるという楽観的な見方は、排水溝の状態が不明であるために否定されました。会議の結果、ロシュフォール占領は「賢明ではなく現実的でもない」と結論付けられました。ウルフは再度の襲撃を主張しましたが、すでに奇襲の優位性が失われていたため、モードントは躊躇しました。28日の朝、2回目の作戦会議でコンウェイ将軍はモードントにフーラへの攻撃を再び許可させました。上陸地点はシャティライヨン＝プラージュに決定されましたが、モードントは砂丘の背後にフランス軍が潜んでいる可能性を懸念しました。その夜、陸軍は上陸船に乗り込みましたが、突然強風が吹き、潮の満ち引きを考慮すると増援の上陸に時間がかかりすぎるため、上陸は再び取り消されました。

撤退とその後

ホークはモードントの優柔不断さに痺れを切らし、「最後通牒」を送りました。陸軍の上陸準備が整わない場合、艦隊はイギリスに帰還するというものでした。モードントは即時の上陸は不可能と判断し、ホークの要求を受け入れて撤退を決定しました。イギリス軍は撤退前にエクス島の要塞を破壊しました。

10月1日、イギリス軍はロシュフォールとエクス島から撤退し、6日にイングランドに到着しました。モードントは、艦隊が西インド諸島から帰還するフランス艦隊に対処する必要があり、ロシュフォール沖に長くとどまることができないとして、自身の行動を正当化しました。しかし、多くの将校は、イギリス軍の行動がフランスに知られ、奇襲の優位性が失われた後も上陸は可能だったと信じて、モードントを批判しました。ウルフとハウは称賛されましたが、ロシュフォールでの失敗は、ジョン・ビングがミノルカ島の海戦で敗北し、銃殺刑に処された事件と比較されました。

遠征の失敗は公式に調査され、モードントに対する軍法会議が推奨されました。大衆が有罪を要求し、大きな圧力をかけたにもかかわらず、軍法会議は作戦自体が理解できないものだとしてモードントを無罪としました。この無罪判決は、モードントを辞任させるべきだと考えたジョージ2世を激怒させました。ピットも、この襲撃を暗に批判し、責任を自分に押し付けた判決に腹を立てました。襲撃の費用は約100万ポンドにも上り、ヘンリー・フォックスに「ギニーで窓ガラスを割るようなものだ」と揶揄されました。

しかし、ピットはフランス海岸への襲撃を継続し、翌年にはサン・マロ襲撃とシェルブール襲撃を実行しました。イギリスの予想とは異なりましたが、襲撃が頻発した結果、西インド諸島とロシュフォールの間を行き来することが危険と見なされ、フランスの商船は代わりにブレストに向かうようになり、イギリスの戦艦に簡単に拿捕されるようになりました。

エクス島は、1809年のバスク・ロードの海戦で再び戦場となりました。

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