ロタール・デメジエール

ロタール・デメジエール：東ドイツ最後の首相、激動の生涯

ロタール・デメジエール（Lothar de Maizière, 1940年3月2日 - ）は、ドイツの政治家であり、東ドイツ最後の閣僚会議議長（首相）を務めた人物です。東西ドイツ統一という歴史的転換期に重要な役割を果たしましたが、その短い政治キャリアは波乱に満ちたものでした。

生い立ちと音楽家への道

デメジエールは、フランスからの亡命ユグノー貴族の末裔として、テューリンゲン州ノルトハウゼンで生まれました。東ベルリンのギムナジウムを卒業後、ハンス・アイスラー音楽大学で学び、ヴィオラ奏者としてベルリン交響楽団に入団。しかし、左腕の神経炎により音楽家の道を断念せざるを得ませんでした。

弁護士から政界へ

音楽家としてのキャリアを諦めた後、デメジエールはベルリン大学法学部の通信教育課程を受講し、1975年に弁護士となりました。良心的兵役拒否者や平和運動家の弁護を担当する傍ら、政府と教会組織の対話にも従事。1989年11月には、東ドイツの衛星政党であったドイツキリスト教民主同盟（CDU）の代表に就任し、政界に進出しました。

東ドイツ最後の首相として

東欧革命の波が押し寄せる中、デメジエールは1990年3月、東ドイツ初の自由選挙で人民議会議員に選出され、同年4月12日に首相に就任しました。当時の彼はほとんど無名の存在でしたが、早期の東西ドイツ再統一とドイツマルク導入を主張し、西ドイツのヘルムート・コール首相の支持を得たことが、選挙での勝利につながりました。

首相としてデメジエールは、東独市民の世論を背景に、西独との早期再統一に向けて尽力しました。1990年10月3日のドイツ再統一後は、コール内閣に無任所の特命国務大臣として入閣し、連邦議会議員にも自動的に選出されました。

シュタージ協力者としての過去と失脚

しかし、デメジエールの政治生命は長くは続きませんでした。間もなく、彼がシュタージ（東ドイツ国家保安省）の協力者であった過去が発覚し、1990年12月17日に大臣を辞任。翌年にはCDU副党首、連邦議会議員も辞職し、政界から完全に身を引きました。

その後

政界を去ったデメジエールは、1996年からベルリンで弁護士事務所を開業し、主に東西ドイツ統一に関する案件を担当しています。

一族

デメジエール家は、フランスから逃れてきたユグノー貴族の子孫であり、彼の父も弁護士でプロテスタント信徒の指導者でした。また、叔父のウルリッヒ・デメジエールは西ドイツでドイツ連邦軍大将・第4代総監を務め、従弟のトーマス・デメジエールはメルケル内閣の閣僚を務めています。

まとめ

ロタール・デメジエールは、東ドイツ最後の首相として、東西ドイツ統一という歴史的瞬間に立ち会いました。しかし、その後のスキャンダルによって政治生命を絶たれ、波乱万丈な生涯を送っています。彼の経験は、歴史の大きな流れの中で、個人の運命がいかに翻弄されるかを物語る一例と言えるでしょう。

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