ロッテルダム条約(正式名称:国際貿易の対象となる特定の有害な
化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関する
ロッテルダム条約)は、有害な
化学物質の国際貿易によって引き起こされる健康や
環境への危険を回避することを目的とした国際的な合意です。この
条約は、特に情報が不足しやすい
開発途上国への
化学物質の輸出において、事前の通告と情報提供を義務化することで、不測の事態を防ぐことを目指しています。
条約の概要と目的
ロッテルダム条約は1998年9月10日にオランダの
ロッテルダムで採択され、2004年2月24日に発効しました。
化学物質や
農薬がもたらすリスクに関して情報を得ることが難しい国々が、貿易に関する意思決定を行う際に必要な情報を基に判断できるようにすることが、この
条約の核心です。すなわち、先進国で禁止または厳しく規制されている
化学物質が、危険性が理解されていないまま輸出される事態を防ぐための措置です。
この
条約では、
開発途上国に対し、輸出国は事前に有害な
化学物質を含む製品の情報を提供し、輸入の意思を問うことが義務付けられています。特に、物質の輸入を希望する国は、事務局に対してその意向を示し、輸出国はその応答に基づいて行動する必要があります。
対象物質と手続き
ロッテルダム条約では、対象となる有害
化学物質や
農薬のリストが付属書IIIに記載されています。輸出する国は、そのリストに含まれている物質について、輸入国からの意向を確認し、必要に応じて法的措置を講じることが求められます。対象物質には、過去において健康や
環境に悪影響を及ぼすことが明らかになったものが含まれています。
その他、付属書IIIに含まれない物質の輸出についても、事前通知が必要です。また、輸出業者は、輸出物質のラベルに危険性を表示し、輸入者に安全に関する情報を提供する義務があります。
経緯と歴史
ロッテルダム条約の起源は、1987年に採択されたロンドンガイドラインにありました。このガイドラインは、任意の取り決めであり行動を制約するものではありませんでしたが、その後の国際的な会議や誓約を通じて、より厳格なルールを求める声が高まりました。1992年の地球サミットでは、
化学物質の管理と情報交換の重要性が再確認され、法的に拘束力を持つ制度を構築することが決まります。
1996年から1998年にかけて行われた交渉の結果、
ロッテルダム条約が成立し、世界中の148カ国以上が締結しました。日本も1999年に署名し、2004年に批准・発効しています。
現在、この
条約は
開発途上国に対する支援と共に、
化学物質の輸出入に対する適切な制度を整えるために重要な役割を果たしています。特に、
化学物質の安全な取り扱いや情報共有の重要性は、今後の国際社会においてもますます高まることが予想されます。
対象物質の具体例
ロッテルダム条約の対象物質には、アラクロール、
農薬の
アルドリンや
DDT、
石綿の一種であるクロシドライトなどがあります。また、
農薬や化学製品の中には、
ペンタクロロフェノールや
トリブチルスズ化合物など、特に注意が必要な物質が含まれています。これらの物質は、
環境や人間の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、特に監視される必要があります。
結論
ロッテルダム条約は、
化学物質の国際貿易において、
開発途上国を保護するための重要な枠組みです。この
条約を通じて、国際社会は危険な物質の取り扱いに対する意識と責任を高めていく必要があります。