ロドピス

ロドピスの生涯と伝説

ロドピス（ギリシャ語: Ροδώπις）は、古代ギリシアにおいて際立つ存在であったトラキア出身の遊女です。彼女の人生は紀元前6世紀にさかのぼり、サッポーと同時代の人物としても知られています。彼女の物語は多くの古文書に記録され、その影響力は今でも語り継がれています。

人物背景と経歴

ロドピスは、紀元前5世紀の歴史家ヘロドトスによると、トラキア出身で、サモス人のイアドモンに仕える女奴隷として生まれました。彼女の主人イアドモンは寓話作家アイソーポス（イソップ）と同時代人物であり、アイソーポスもまた、彼女の元で奴隷として働いていました。ロドピスは、サモスの裕福な商人クサンテスに連れられ、エジプトへと移住し、そこで魅力を生かして生計を立てていきました。彼女は女流詩人サッポーの兄、カラクソスに高額で身請けされ、自由を得ることになります。このことはサッポーの詩にも描かれ、彼女は兄を非難する内容を詠んでいます。

エジプトでの生活を続けたロドピスは、その美貌により多くの富を手に入れました。彼女は自らの財を用いて多くの鉄串を作り、これをデルポイの神殿に奉納しました。この奉納品は、神殿の正面に位置するキオス人の奉納祭壇の背後に積まれていると伝えられています。

ロドピスとピラミッドの伝説

また、彼女にまつわる多くの伝説の中で興味深いのは、エジプトの三つ目のピラミッド、メンカウラー王のピラミッドについての話です。一部の古代ギリシア人は、このピラミッドの建設にロドピスが関与したと主張しています。しかし、ヘロドトスは彼女の資産や時代背景から、この説を否定しています。

紀元前1世紀に記されたディオドロスの『歴史叢書』では、ロドピスの墓としてのピラミッドの話が紹介されています。そこでは彼女の愛人たちが共同でピラミッドを建てたとされ、この伝説は著名な遊女と、美貌の王妃ニトクリスの話が混同されている可能性があると指摘されています。

ストラボンの『地理誌』でもエジプトの第三ピラミッドが「遊女の墓」と呼ばれており、ロドピスとの関連が語られています。この物語では、彼女が遇ったファラオによって妻となり、死後にはピラミッドに埋葬されたとされています。このエピソードは、後のシンデレラ物語の先駆けとも言われています。

文化的影響と後世の評価

さらに、紀元1世紀のプリニウスの『博物誌』ではロドピスが彼女の資金でピラミッドを建設したと記されています。また、アテナイオスの『食卓の賢人たち』では、彼女の名はサッポーの詩においても言及され、ロドピスとドリカは異なる人物であることが強調されています。

ロドピスの伝説は、彼女の美しさと知恵だけでなく、富や愛についての物語を通じて、古代の文化においても重要な位置を占めています。彼女の名は、時代を超えて多くの人々に語られ、今なおその存在感を放っています。

参考文献

• - ヘロドトス著、松平千秋 (訳)『ヘロドトス 歴史 上』ワイド版　岩波書店（2008/2/15）
• - ディオドロス著、飯尾都人（訳）『ディオドロス「神代地誌」』龍溪書舎 (1999/6/20）

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