ロニー・キューバー

ロニー・キューバー（Ronnie Cuber、1941年12月25日 - 2022年10月8日）は、アメリカ合衆国出身の著名なジャズ・バリトン・サックス奏者です。

特にその重厚かつアグレッシブなバリトン・サックスのサウンドで知られ、ハード・バップやラテンジャズの分野で重要な役割を果たしました。主楽器であるバリトン・サックスにとどまらず、テナー・サックス、ソプラノ・サックス、クラリネット、フルートといった様々な管楽器も高い技術で演奏しました。彼はジャズの枠を超え、ラテン、ポップ、ロック、ブルースなど、多岐にわたる音楽ジャンルのセッションでその才能を発揮しました。

キューバーのキャリアは1959年、マーシャル・ブラウン率いるニューポート・ユース・バンドへの参加から本格的に始まります。この時期に彼はテナー・サックスからバリトン・サックスへと転向し、自身の音楽的個性を確立していきます。初期の重要な活動としては、1962年のスライド・ハンプトン、そして1963年から1965年にかけてのメイナード・ファーガソンとの共演が挙げられます。その後も、1966年から1967年にはギタリストのジョージ・ベンソンとタッグを組み、彼の初期の重要作品に参加しています。

彼はキャリアを通じて、実に幅広いアーティストたちと共演しました。ブルース界の伝説B.B.キング、シンガーソングライターのポール・サイモンやエリック・クラプトンといったジャンルを超えた巨匠たちの録音に招かれ、その存在感のあるサウンドで楽曲に深みを与えました。また、オルガン奏者ロニー・スミスのアルバム『ドライヴス』（1970年、ブルーノート）での演奏は、彼の魂のこもったプレイの代表例として高く評価されています。ロックバンド、J・ガイルズ・バンドのヒットアルバム『フリーズ・フレイム』でも彼のサックスを聴くことができます。

さらに、彼はフランク・ザッパのグループにも参加し、特に1970年代中頃の活動が知られています。代表的なライブアルバム『ザッパ・イン・ニューヨーク』にその名演が刻まれています。ジャズ界においては、1979年にはサックス奏者リー・コニッツが率いるノネット（9人編成のバンド）のメンバーとして活動しました。1990年代初頭には、伝説的なベーシスト、チャールズ・ミンガスへのトリビュートバンドであるミンガス・ビッグ・バンドにも参加し、その力強いアンサンブルを支えました。人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のハウスバンドのメンバーとしても、その安定した演奏力を見せました。

ロニー・キューバーは、生涯にわたり多数のリーダーアルバムを発表するとともに、前述のアーティストを含む膨大な数の録音にゲストプレイヤーとして参加しました。彼のディスコグラフィは、その音楽性の幅広さと多忙なセッションワークを如実に物語っています。

2022年10月8日、ニューヨーク市にて80歳でその波乱に満ちた生涯を閉じました。直接的な死因は公表されていませんが、関係者の証言によると、2020年に経験した転倒の影響による合併症に苦しんでいたとされています。

ロニー・キューバーは、その圧倒的なテクニックと表現力でバリトン・サックスの可能性を追求し、ジャズを中心に様々な音楽シーンに多大な貢献をした、まさしくレジェンドと呼ぶべき存在です。彼の残した力強いサウンドは、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。

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