ロバート・ギャレット

ロバート・ギャレット（Robert S. Garrett、1875年5月24日 - 1961年4月25日）は、アメリカ合衆国メリーランド州出身の陸上競技選手として、その名を歴史に刻んでいます。彼は特に、1896年に開催された第1回アテネオリンピックでの活躍で知られています。

裕福な家庭に育ったギャレットは、幼い頃からスポーツの才能を発揮していました。当初は砲丸投を専門としていましたが、跳躍競技にも積極的に挑戦していました。プリンストン大学在学中に、記念すべき第1回オリンピックが開催されることを知り、迷うことなく出場を決意します。

オリンピック出場に際し、大学の教授から円盤投への参加を勧められたギャレットは、円盤の製作に取り組みます。歴史の専門家から円盤の図面を提供してもらい、それを基に鍛冶屋に製作を依頼しました。しかし、完成した円盤は14kgという途方もない重さで、とても扱えるものではありませんでした。そのため、彼は一度は円盤投への参加を諦めかけました。しかし、アテネで目にした本物の円盤が5ポンド（約2.3kg）にも満たないことを知り、再び円盤投に挑戦することを決意します。

競技当日、ギリシャの選手たちは伝統的な投法に固執していました。彼らの投擲は、まるで古代ギリシャの競技者が蘇ったかのようでした。しかし、ギャレットの投法は異質でした。彼はハンマー投のようなフォームで、右手で円盤を掴み、勢いよく回転して投げました。最初の2投はぎこちなく、円盤は不安定な回転で観客席に飛び込む危険なものでした。観客からは嘲笑の声が上がりました。しかし、最終投擲で29.15mという記録を叩き出し、ギリシャのパナギオティス・パラスケボポウロス（Panagiotis Paraskevopoulos）の記録を上回ると、会場は静まり返りました。自国の伝統競技で敗れたことに、観客は唖然としたのです。

円盤投での金メダルの他、ギャレットは砲丸投でも11.22mを記録して金メダルを獲得しました。さらに、走高跳では1.65mで銀メダル、走幅跳でも6.00mで銀メダルを獲得し、フィールド種目で合計4つのメダルを獲得するという偉業を成し遂げました。

4年後の1900年パリオリンピックにも出場し、砲丸投と立ち三段跳で銅メダルを獲得しました。しかし、前回優勝した円盤投は、競技日程がキリスト教の安息日である日曜日に重なったため、出場を辞退しました。

ロバート・ギャレットは、初期オリンピックにおけるアメリカの英雄として、その名は永遠に語り継がれるでしょう。

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