ロバート・フィッツロイ

ロバート・フィッツロイ：探求者、科学者、そして悲劇の総督

ロバート・フィッツロイ（1805年7月5日 - 1865年4月30日）は、イギリス海軍の軍人であり、気象学の先駆者、測量学者、そしてニュージーランドの総督という、多様な顔を持つ人物でした。彼は、チャールズ・ダーウィンを乗せたビーグル号の航海で艦長を務めたことで最もよく知られています。

生い立ちと海軍でのキャリア

フィッツロイは、イングランドのサフォーク州で、名門貴族の家系に生まれました。祖父は首相を務めた第3代グラフトン公であり、父方の祖先はイングランド王チャールズ2世に遡ります。12歳で海軍学校に入学し、14歳で海軍に入隊。着実に昇進を重ね、1828年にはビーグル号の艦長に任命されました。これは、前任の艦長が自殺したという悲劇的な出来事を受けたものでした。

ビーグル号航海とダーウィンとの出会い

1831年、フィッツロイはビーグル号の第2回航海に出発します。この航海には、博物学者としてチャールズ・ダーウィンが同乗しました。測量という任務の傍ら、ダーウィンは各地で動植物や地質を調査し、後に進化論の着想を得る上で重要な経験を積みました。

フィッツロイ自身も科学的な関心が高く、航海中には詳細な記録を取りました。しかし、ダーウィンの進化論が発表されると、彼は自身の信仰との矛盾に苦悩し、ダーウィンを非難する側に回りました。このことは、彼にとって大きな心の痛手となったようです。

ニュージーランド総督として

1843年、フィッツロイはニュージーランド総督に任命されます。しかし、その職務は困難を極めました。彼は、先住民マオリの権利を保護しようと努めましたが、入植者との対立を招き、本国政府からの支持も失ってしまいました。その結果、1845年に総督を解任され、失意のうちに帰国することになりました。

気象学への貢献と晩年

総督を解任された後、フィッツロイは気象学の研究に打ち込みます。彼は、暴風警報を実用化するなど、近代気象学の発展に大きく貢献しました。しかし、精神的な苦悩は癒えず、1865年、彼は自ら命を絶ちました。

人物像と評価

フィッツロイは、有能な軍人であり、科学者でもありましたが、同時に繊細で苦悩を抱えやすい人物でした。ダーウィンとの関係、ニュージーランド総督としての挫折、そして進化論に対する葛藤は、彼の人生に大きな影を落としました。しかし、彼の気象学への貢献は高く評価されており、その名前は、現在も気象用語や地名に残っています。

主な功績

ビーグル号航海における測量と記録
暴風警報の実用化
気象データの収集と分析

遺産

フィッツロイの死後、彼の妻と娘は困窮しましたが、友人や同僚の尽力により、政府からの援助を受けることができました。彼の名前は、南米の山や川、フォークランド諸島の地名、そして気象海域「フィッツロイ」として、今も人々に記憶されています。

参考文献

ジョン D. コックス, 嵐の正体にせまった科学者たち 10. ロバート・フィッツロイ≪報われなかった先覚者≫、（訳）堤 之智、丸善出版、2013、ISBN 978-4-621-08749-7

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