ロビーカー

ロビーカーとは

ロビーカー（ラウンジカー、ビュッフェ・ラウンジ、ビュッフェ・カー、クラブ・カーなどとも呼ばれる）は、鉄道車両の一種で、乗客が飲食物を購入したり、リラックスできるスペースを提供する車両です。大きな窓や快適な座席が特徴で、通常の客席とは異なる雰囲気でくつろぐことができます。

アメリカ合衆国におけるロビーカー

アメリカでは、一般的に「ラウンジカー」と呼ばれます。初期のラウンジカーは、小さなキッチンを備え、限定的なメニューを提供していました。アムトラックの「コースト・スターライト」号では、2018年まで寝台利用者専用の「パシフィック・パーラーカー」というラウンジカーが運行されていました。

これらの車両は、プルマン社やアッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道のフレッド・ハーヴィ・カンパニーのような専門会社によって運営されていました。プルマン社のラウンジカーは寝台利用者専用でしたが、鉄道会社が運営するものは一等車の乗客だけでなく、普通座席の乗客も利用できました。「ビュッフェ・ラウンジカー」は、フルサービスの食堂車がない列車でよく用いられ、飲料と軽食を提供していました。

イギリスにおけるロビーカー

イギリスでは、豪華なラウンジカーをプルマン社にちなんで「プルマンカー」と呼んでいます。

日本におけるロビーカー

日本では、日本国有鉄道（国鉄）やJR各社が所有する夜行列車や寝台列車、ジョイフルトレインなどに連結される、乗車定員分の運賃・料金を収受しない車両や空間を指します。列車や車両によって、サロンカー、ラウンジカーなどとも呼ばれます。

ロビーカーの歴史

展望室・談話室

日本の鉄道では、1910年に東海道・山陽本線で運行された特別急行列車の一等展望車の展望室・談話室がその始まりと言えます。当初は一等車利用者向けのサロンのような扱いでしたが、アメリカの長距離乗客向けフリースペースを参考にしたものでした。

オシ16形食堂車「サロンカー」

1960年代には、夜行列車・寝台車の乗客が寝台をセッティングする間、一時的に利用できる場所として、簡易食堂車オシ16形が「サロンカー」として登場しました。軽食や飲料を提供し、電子レンジを採用するなど画期的でしたが、あくまで食堂車としての位置づけでした。

フリースペースとしてのロビーカーの登場

1985年、九州ブルートレイン「はやぶさ」に連結されたオハ24形700番台が、本格的なロビーカーの先駆けとなりました。余剰車両を活用し、乗客にゆとりの空間を提供することが目的でした。ホテルのロビー・ラウンジのような空間ですが、必ずしも乗務員が常駐しているわけではありませんでした。

その後、「はやぶさ」の好評を受け、「富士」や「あさかぜ」など他の列車にも導入され、利用者に好評を得ました。

ロビーカーの変容と食堂車のロビーカー化

1990年には、JR西日本の「あさかぜ2・3号」や「瀬戸」にスハ25形300番台が連結されました。これは、電源車としての機能も持ち、自動販売機や売店、シャワールームを備えていました。また、「カシオペア」にはハイデッキの展望ラウンジカーが導入されました。

食堂車の営業終了後は、食堂車をフリースペースとして活用する例も見られました。

ロビーカー連結の終了

1990年代後半以降、ブルートレイン自体の廃止や運行本数の減少に伴い、ロビーカーの連結も減少しました。2005年には「はやぶさ」と「富士」が併結運転となり、ロビーカーの連結は終了しました。その後、「北斗星」でもロビーカーの連結が終了しました。

フリースペースとしての「ミニロビー」など

ロビーカーの代わりに、座席の改修や寝台車の個室化に伴い、車両の一部をフリースペースとして活用するケースも増えました。これを「ミニロビー」と呼ぶこともあります。昼行列車でも禁煙スペースをフリースペースに転換する例が見られました。また、地域観光情報を展示する「インビテーションカー」や、団体向けにカラオケ機材などを設置したジョイフルトレインも登場しました。

こども室・こどもサロン

幼児向けのおもちゃや遊具を設置した「こども室」や「こどもサロン」も存在します。JR四国の「アンパンマン列車」やJR北海道の「ドラえもん海底列車」、JR東日本の「スーパービュー踊り子」などが代表例です。これらの車両は、観光列車としての側面が強いです。また、0系新幹線車両を改造した「こどもサロン」や、九州の特急「ゆふDX」にも同様の設備がありました。

まとめ

ロビーカーは、鉄道の旅をより快適で楽しいものにするための重要な要素です。その形態は時代とともに変化してきましたが、乗客がリラックスできる空間を提供し、旅の思い出を豊かにするという目的は、今も変わっていません。

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