ロビー・マキュアン

ロビー・マキュアン：豪州が生んだ名スプリンター

ロビー・マキュアン（Robbie McEwen, 1972年6月24日 - ）は、オーストラリア・クイーンズランド州出身の元プロロードレース選手です。ステージレースを中心に活躍し、特にスプリント能力に長けていました。2002年、2004年、2006年のツール・ド・フランスでマイヨ・ヴェール（ポイント賞）を獲得するなど、輝かしい実績を残しています。現在はベルギーに家族と暮らし、解説者やコメンテーターとして自転車競技に関わっています。

経歴

マキュアンは、幼少期にBMXで才能を発揮し、オーストラリアチャンピオンに輝きました。1990年に18歳でロードレースに転向し、着実に経験を積みます。1994年にはオーストラリア・ナショナルチームに選出され、世界選手権に出場。1996年にラボバンクと契約し、プロデビューを果たしました。同年にはアトランタオリンピックにも出場しましたが、結果は23位でした。

翌1997年、ツール・ド・フランスに初出場し、117位で完走。その後も毎年のように同大会に出場し、経験を重ねました。1999年のツール・ド・フランスでは最終ステージで優勝、2000年のシドニーオリンピックでは19位という成績を残しました。

2002年は、マキュアンにとって飛躍の年となります。パリ〜ニースで2勝、ジロ・デ・イタリアでも2勝を挙げ、ツール・ド・フランスではステージ2勝に加え、エリック・ツァベルとの激しいポイント争いを制してマイヨ・ヴェールを獲得しました。この年は、ツアー・ダウンアンダーでも4勝を挙げてポイント賞を獲得、オーストラリア選手権でも初優勝を飾るなど、目覚ましい活躍を見せ、オーストラリアのサイクリスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。

2003年もジロ・デ・イタリアで2勝をあげ、2004年にはツール・ド・フランスでステージ2勝を挙げて2度目のポイント賞を獲得しました。アテネオリンピックでは、マシュー・ホワイト、バーデン・クック、マイケル・ロジャース、スチュアート・オグレディらとチームを組んで出場しています。

2005年は、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスでそれぞれステージ3勝を挙げ、オーストラリア選手権で2度目の優勝を果たしました。2006年にもジロ・デ・イタリアでステージ3勝、ツール・ド・フランスでもステージ3勝を挙げて3度目のポイント賞に輝きました。

2007年もジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスでそれぞれ1勝を記録しています。

2008年は、ツール・ド・ロマンディで1勝、ツール・ド・スイスでは2勝を挙げました。ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスでは勝利を逃しましたが、ヴァッテンフォール・サイクラシックスで優勝、パリ〜ブリュッセルでは4連覇を達成するなど、30代後半になってもその実力は衰えを見せませんでした。

2009年からはチーム・カチューシャに移籍しますが、度重なる落車に見舞われ、怪我に苦しみます。2011年にはチーム・レディオシャックへ移籍、2012年には母国の新チーム、グリーンエッジに加入しましたが、同年5月のツアー・オブ・カリフォルニアを最後に現役を引退しました。

レーススタイル

170cmとスプリンターとしては小柄ながら、BMXで培った卓越したバイクコントロールと爆発的な加速力を武器に、集団スプリントでその能力を発揮しました。危険な斜行や僅かな隙間を突く果敢な動きで勝利を掴むスタイルは、時に議論を呼ぶこともありましたが、多くのファンを魅了しました。また、他チームの選手の後ろについて体力を温存し、ゴール前で一気にスパートする戦法も得意としていました。

アシスト選手をあまり必要とせず、単独で勝利を目指すスタイルでしたが、カチューシャ移籍後はトレインを活用するようになります。しかし、2010年のツアー・ダウンアンダーでは、チームスカイのトレインに便乗して3位に入るなど、状況に応じた柔軟な対応も見せています。

一方、上りは苦手としており、山岳ステージでは制限時間ぎりぎりでゴールすることが多く、典型的なスプリンターと言えます。

ステージレースでの実績が目立つ一方で、ワンデーレースでの実績はやや見劣りするとされていましたが、2008年にはヴァッテンフォール・サイクラシックスで優勝を果たし、その評価を覆しました。

エピソード

マキュアンは、バイクコントロールの技術が高く、レース中やゴール時にウィリーやバニーホップなどのパフォーマンスを披露することがありました。

2005年のツール・ド・フランス第3ステージでは、ゴールスプリントでスチュアート・オグレディに頭突きを繰り返し、降格処分と罰金が科せられました。

上りを苦手とする選手が集まる集団「グルペット」を率いることが多く、解説者の栗村修氏によって「マキュアン友の会」と名付けられました。マキュアン自身も「Kaicho（会長）」を自称することがあります。

主な所属チーム

1996-1999年：ラボバンク
2000年：ファームフリッツ
2001年：ドモ・ファームフリッツ
2002年：ロット・アデッコ
2003-2004年：ロット・ドモ
2005-2006年：ダヴィタモン・ロット
2007年：プレディクトール・ロット
2008年：サイレンス・ロット
2009-2010年：チーム・カチューシャ
2011年：チーム・レディオシャック
2012年：オリカ・グリーンエッジ

主な成績

ツール・ド・フランス：ポイント賞（2002年、2004年、2006年）
ジロ・デ・イタリア：ステージ通算12勝
ツール・ド・フランス：ステージ通算12勝
世界選手権：2位（2002年）
オーストラリア選手権：優勝（2002年、2005年）
* ヴァッテンフォール・サイクラシックス：優勝（2008年）

ロビー・マキュアンは、そのアグレッシブなレーススタイルと愛されるキャラクターで、多くのファンに記憶される名スプリンターです。

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