ロル・コックスヒル

ロル・コックスヒル（Lol Coxhill, 1932年9月19日 - 2012年7月10日）は、イギリスのフリー・インプロヴィゼーション・サックス奏者であり、独特なユーモアセンスを持つ談話家でした。彼は主にソプラノサックス、ソプラニーノサックスを演奏し、その即興演奏のスタイルと、ジャンルにとらわれない幅広い活動で知られています。

生涯と音楽活動

ポーツマスで生まれたコックスヒルは、幼少期をバッキンガムシャー州アイルズベリーで過ごし、1947年に最初のサックスを購入しました。兵役後、彼はプロミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせ、デンジル・ベイリーズ・アフロキュービストやグラハム・フレミング・コンボなどのバンドでアメリカ空軍基地を巡業しました。1960年代にはアメリカに渡り、ルーファス・トーマス、モーズ・アリソン、オーティス・スパン、チャンピオン・ジャック・デュプリーといったブルース、ソウル、ジャズのミュージシャンと共演しました。

コックスヒルは、独学でソロ・サックスの演奏技術を開発し、大道芸的なパフォーマンスも行いました。通常のサックス奏者のようにトリオやカルテットを率いることは少なく、むしろサイドマンやコラボレーターとして、多くのミュージシャンと共演しました。1960年代後半から1970年代初めには、カンタベリー・ロックのバンドであるキャロル・グライムス・アンド・デリヴァリーや、ケヴィン・エアーズ・アンド・ザ・ホール・ワールドのメンバーとしても活動しました。

特徴的な演奏スタイルとコラボレーション

コックスヒルは、ピアニストのスティーヴ・ミラーや、ギタリストのG.F.フィッツ＝ジェラルドとのデュエット、そしてソロ演奏で特に知られています。また、ウォータールー橋とチャリング・クロス橋の間に架かるハンガーフォード橋の一部である古い歩道橋でソロ演奏を披露し、ジョニ・ミッチェルの楽曲「フォー・フリー」に影響を与えたと言われています。

彼は、マイク・オールドフィールド、モーガン・フィッシャー、クリス・マクレガーのブラザーフッド・オブ・ブレス、ジャンゴ・ベイツ、ダムド、デレク・ベイリーなど、多様なジャンルのミュージシャンや、パフォーマンス・アート・グループのウェルフェア・ステートとも共演しました。また、ジョニー・ロンド・デュオ・オア・トリオ、メロディ・フォール、レシデンツといった、ユーモラスな名前を持つグループでも活動しました。これらのバンドでは、フリー・インプロヴィゼーションとボールルーム・ダンスの曲、ポピュラーソングを組み合わせた演奏を披露しました。

コックスヒルは、ブラックネル・ジャズ・フェスティバルにも頻繁に出演し、演奏家としてだけでなく、ユーモアを交えた談話でも観客を魅了しました。彼はしばしば「演奏しようとしていることが理解できないかもしれない」という言葉で自身の音楽を紹介しました。

家族と晩年

息子のサイモン・コックスヒルはパンク・ドラマーとして、娘のクレア・コックスヒルはボーカリストとして活動しています。また、孫のマディ・コックスヒルはウクレレ・バンドで歌い演奏しています。CD『エキゾチック・ビートルズ 其の弐』の1曲「アイ・アム・ザ・ウォルラス」には、3人の子供たち全員が父親と共演しています。

ロル・コックスヒルの音楽は、フリー・インプロヴィゼーションの可能性を追求し、聴衆に驚きとユーモアを提供し続けました。彼の音楽は、ジャンルの壁を超え、多様なアーティストとのコラボレーションを通じて、今もなお多くの人々に影響を与えています。

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