ロンドン市長 (シティ・オブ・ロンドン)

ロンドン市長の概要

ロンドン市長（Lord Mayor of the City of London）は、イギリスの首都・ロンドンの中心に位置するシティ・オブ・ロンドンの首長を指します。現在の役割は名誉職としての色彩が強く、実際の行政はグレーター・ロンドンの公選の市長（Mayor of London）が担っています。これにより、ロンドン市長が行政の主要な運営者ではなく、シティ内における伝統的な役職となっています。日本語では、グレーター・ロンドンの市長との区別から「ロードメイヤー」と表記されることもあります。

歴史的背景

ロンドンにおける市長制度の起源は、ノルマン・コンクエストの後、1192年にロンドンに自治権が付与されたことにさかのぼります。初代市長にはヘンリー・フィッツアルウィンが選出され、1212年までその職を務めました。1215年にはジョン王がロンドン市民に対して市長の選出権を与え、その後、市長の任期は1年と短縮されました。この選挙権を獲得する過程で、全ての市民による選出と、名士たちからなる長老参事会員による選出という意見対立が生まれ、長い歴史を通じて様々な変遷がありました。

特に、1265年から1270年、1285年から1298年の期間は、市長職が停止され、国王が任命する都市監察官が市政を運営しました。この期間は長老参事会と王権との接近を招き、1273年には市長選出権が長老参事会の特権とされました。14世紀以降は、同業種組合が市政の実権を握るようになり、現在まで続く選出のスタイルが定まります。1319年には任期が1年と再選不可に定められました。

現在の役割

1888年に制定された地方行政法により、カウンシル（地方議会）が市政の実権を握ることとなりました。そして、1963年に大ロンドンが設立されて以降、ロンドン市長の役割は名誉職的なものになっています。しかし、市長は依然としてシティ・オブ・ロンドンにおける伝統や権威の象徴であり、ロンドン市民によって重んじられています。特に、イギリス国王がシティ内に入る際には、事前に市長の了承が必要とされています。

選挙と任期

ロンドン市長の選挙は、古くから9月に行われてきましたが、1959年以降は毎年9月29日のミカエル祭に合わせて行われています。有権者は市内の26,000人の同業種組合の会員です。被選挙権は長老参事会員及びシェリフを経験した者に限定されています。市長の任期は一年間で、11月の第2土曜日には新市長が市民の代表から忠誠宣言を受けます。その後、王立裁判所で正式に任命され、国王の名代である首席裁判官に忠誠を誓います。

かつてはテムズ川を船で巡るなどして市民の祝福を受ける行事が行われていましたが、現在では馬車を用いた行列が主流です。また、祝賀行事として2日後にはギルドホールにて就任披露宴が開催され、多くの要人が招かれています。

このように、ロンドン市長はただの名誉職にとどまらず、その地位と役割に伝統と歴史が深く根付いている重要な存在です。

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