王立裁判所

王立裁判所：ロンドンの司法の中枢

ロンドンのオールドウィッチ地区にそびえ立つ王立裁判所（Royal Courts of Justice）は、その壮麗な外観と歴史的意義から、ロンドンのランドマークとして知られています。正式名称は王立裁判所ですが、一般的には「Law Courts」と呼ばれ親しまれています。イングランドとウェールズの控訴院と高等法院がここに置かれており、イギリス司法制度の中核を担う重要な施設です。中央裁判所施設と訳されることもあります。

建物の概要

1882年12月4日、ヴィクトリア女王によって開廷された王立裁判所は、建築家George Edmund Streetによる設計です。東西南北140メートル、高さ75メートルという巨大な建物は、3500万個ものポートランド石を使用して建設されました。部屋数は1000を超え、廊下の総延長は約5.6キロメートルにも及びます。その規模と荘厳な雰囲気は、訪れる者を圧倒します。

建設には8年の歳月と、設計案の選定、土地の取得と補償、労働争議といった様々な困難がありました。11もの設計案が検討された後、現在の設計が採用され、議会が最高裁判所施設建設を決議してから、完成までに多くの困難を乗り越えてきました。George Edmund Street自身は、この建物の完成を見ることなく亡くなりました。

建物はイギリス指定建造物一級に指定されており、その歴史的・建築的価値は法律によって保護されています。時代とともに司法業務の増加に対応するため、1912年には離婚法廷を収容する増築が行われ、裁判所では初めてのエアコン完備の法廷が誕生しました。1968年にはさらに増築され、地下には独房が設けられましたが、現在は家族関連の訴訟に使用されています。

周辺環境

王立裁判所の周辺には、弁護士事務所を始めとする多くの司法関連施設が集中しています。イギリスの四大法曹院（リンカーン法曹院、グレイ法曹院、ミドル・テンプル、インナー・テンプル）も近くにあります。また、裁判官が着用するカツラや法衣などの専門店も営業しています。かつては多くの新聞社本社もこの周辺にありましたが、1980年代半ばにカナリー・ワーフへの移転が相次ぎました。現在でもBBCワールドサービスの本社が近くにあります。重要な裁判の判決時には、多くのメディア関係者が王立裁判所に集まり、世界中の注目を集めます。

王立裁判所の西隣にはロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、2ブロック南にはキングス・カレッジ・ロンドンがあり、名門大学にも囲まれています。さらに、紅茶ブランド「トワイニング」の創業地であり、同社唯一の直営路面店が王立裁判所の向かいに位置しています。また、サミュエル・ジョンソンが英語辞書を編纂した家も徒歩圏内にあります。

内部施設

王立裁判所の内部には、控訴院と高等法院に加え、カフェやイベントスペースが設けられています。クリスマスパーティなどのイベントも開催され、司法機関としての機能だけでなく、地域社会にも開かれた空間となっています。

アクセス

王立裁判所へのアクセスは、ロンドン地下鉄テンプル駅またはチャンスリー・レーン駅から便利です。ウエストミンスター区に位置していますが、シティ・オブ・ロンドンやカムデン区にも近接しており、ロンドンの主要なエリアに容易にアクセスできます。フリート・ストリートにはシティとの境界線を示すドラゴンの彫像（テンプルバー）があり、歴史を感じさせるロケーションです。

まとめ

王立裁判所は、単なる司法機関としてだけでなく、歴史的建造物、地域社会のハブ、そしてロンドンの象徴として、様々な側面を兼ね備えた場所です。その壮大なスケールと歴史的背景、そして活気ある周辺環境は、訪れる者に忘れられない印象を与えます。

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