ローチ (コイ科)

ローチ (Rutilus rutilus)

ローチは、コイ目コイ科に属する淡水魚で、学名をRutilus rutilusといいます。ヨーロッパから西アジアにかけて広く分布しており、多様な環境に適応する能力を持っています。ローチと呼ばれる魚は、Rutilus属だけでなく、Leucos属、Hesperoleucus属などにも存在します。

分布

ローチは、地中海周辺を除くヨーロッパ全域に分布し、東はシベリアにまでその生息域を広げています。東ヨーロッパやアジアにはいくつかの亜種が存在し、カスピ海や黒海などの汽水域や海水域に進出する亜種もいます。これらの亜種を独立種とする考え方もあります。地中海周辺やスペイン、ポルトガルの北西部には、ローチの近縁種が生息しています。また、オーストラリアには、1860年代から1880年代にかけてスポーツフィッシング目的で導入されました。

形態

ローチの体長は通常35cm程度で、最大でも50cmほどです。体色は青みがかった銀色で、腹部は白色をしています。各鰭は赤色を帯びているのが特徴です。側線鱗数は39から48個で、背鰭と臀鰭には12から14本の条があります。稚魚の体形は細長いですが、成長するにつれて体高が高くなります。瞳孔の上部が赤色を呈するのが特徴ですが、個体によっては瞳孔や鰭の赤色が薄い場合もあります。ローチはラッドという魚とよく似ていますが、ラッドは背鰭の条数が少なく、背鰭の位置がより後方にある点で区別できます。

生態

ローチは、小さな池から大河川、湖まで、幅広い淡水環境に生息しています。浅瀬で餌を摂ることが多く、汚染に強い性質を持っているため、他の魚が生存できないような環境でも生き残ることができます。コイ科の中では、栄養の乏しい地域で最も多く見られる魚種です。また、汽水域にも進出することが知られています。-4℃から31℃までの水温に耐えることができます。ローチは、他の属の魚種とも容易に交雑することが知られており、ブリームやラッドなどとの交雑個体が存在します。分布域の多くでは最も数が多い魚ですが、水草が少なく濁った環境では、ブリームの個体数が上回る場合があります。群れで生活し、海水に進出する亜種を除いては回遊性はありません。普段は浅瀬で生活していますが、寒い時期には深場に移動します。幼魚は水草の中で身を隠し、成魚は水草を餌とするため、水草の多い環境を好みます。餌としては、水草、藻類、無脊椎動物、水生昆虫、蠕虫などを捕食し、幼魚は主にプランクトンを食べます。餌が少ない環境では、体高が低いまま成熟し、環境に適応します。

ローチの寿命は15年以上で、寄生虫として吸虫のRhipidocotyle campanula、ミクソゾアのMyxobolus muelleri、線虫のRaphidascaris acusなどが知られています。

産卵期は3月から6月で、水温の上昇とともに始まります。産卵場所は毎年同じ場所が選ばれ、雄の集団の中に雌が入り込みます。雄が雌を追いかけ、卵を受精させる際に激しく暴れ、水面から飛び出すこともあります。一度の産卵で最大10万個の卵を産みますが、水素イオン指数が5.5以下の環境ではうまく繁殖することができません。

人との関わり

ローチは、釣り人にとって身近な魚です。釣りの餌としては、赤虫、ミミズ、ウジやウジのサナギ、パン、茹でたスイートコーン、麻の実、スズメノエンドウ、カラスノエンドウなどが用いられます。ローチは流れの緩やかな場所にいることが多いため、ウキを用いた釣り方が一般的です。さまざまな淡水域に生息しているため、老若男女問わず多くの人に親しまれている釣りの対象魚です。

関連項目

淡水魚
海水魚
* 魚の一覧

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