ローヌ渡河戦

ローヌ渡河戦：ハンニバルのイタリア侵攻を決定づけた戦い

ローヌ渡河戦は、第二次ポエニ戦争中の紀元前218年秋、ハンニバル率いるカルタゴ軍がイタリア半島への侵攻を図る中で発生しました。この戦いは、ガリア人の一部族であるヴォルカエ族と、ローヌ川東岸（現在のオランジュとアヴィニョンの間）付近で激突したものです。

戦いの背景：ローマとカルタゴの対立

当時、カルタゴとローマは、地中海の覇権をめぐって激しく対立していました。ハンニバルは、ローマを打ち破るために、イベリア半島からアルプスを越えてイタリアに侵攻するという大胆な戦略を立てました。

ローマの備え

ローマは、カルタゴの動きを警戒し、来るべき戦争に備えていました。執政官プブリウス・コルネリウス・スキピオは、ハンニバルのイタリア侵入を阻止するために、軍を率いて派遣されました。

カルタゴの備え

一方、ハンニバルは、サグントゥム包囲戦の後、軍を再編し、イベリア半島からイタリアへ向かう準備を進めていました。彼の軍は、歩兵90,000、騎兵12,000、そして戦象37頭という大軍勢でした。

ローヌ渡河戦の勃発

紀元前218年、ハンニバルは軍を率いてイベリア半島を出発し、ピレネー山脈を越えてローヌ川に到達しました。ローヌ川東岸には、親ローマのヴォルカエ族が野営しており、カルタゴ軍の渡河を阻止しようとしていました。

ハンニバルの策略

ハンニバルは、ハンノ率いる別働隊を上流に派遣し、ヴォルカエ族の背後を襲撃する作戦を実行しました。ハンノは夜陰に乗じてローヌ川を渡り、ヴォルカエ族の野営地の背後に潜伏しました。

渡河作戦の開始

ハンノからの合図を受けたハンニバルは、本隊を率いてローヌ川の渡河を開始しました。ヌミディア騎兵を先頭に、歩兵が続き、川幅900メートルを果敢に渡りました。

ヴォルカエ族の敗北

ヴォルカエ族は、カルタゴ軍の渡河を阻止しようとしましたが、ハンノの別働隊による背後からの攻撃を受け、混乱に陥りました。前後から挟撃されたヴォルカエ軍は、ついにカルタゴ軍に打ち破られました。

戦いの影響

ローヌ渡河戦におけるカルタゴ軍の勝利は、その後の第二次ポエニ戦争の行方に大きな影響を与えました。もしこの戦いでカルタゴ軍の渡河が阻止されていたら、ハンニバルのイタリア侵攻は実現しなかったかもしれません。

ローマ軍の対応

プブリウス・スキピオは、ハンニバルの進軍を阻止するためにマッシリアに到着しましたが、すでにハンニバルはアルプスへ向かっていました。スキピオは、兄に軍を委ねてイベリアへ向かわせ、自身はイタリアに戻り、ハンニバルの侵攻に備えました。

渡河地点の謎

ローヌ渡河戦が行われた正確な場所は、現在も特定されていません。しかし、歴史家たちは、様々な仮説をもとに、ブール＝サン＝タンデオル、ボーケール、フルクなどの候補地を挙げています。

まとめ

ローヌ渡河戦は、ハンニバルの大胆な戦略と、カルタゴ軍の卓越した戦術が光る戦いでした。この戦いの勝利によって、ハンニバルはイタリア侵攻を成功させ、ローマを苦しめることになります。ローヌ渡河戦は、第二次ポエニ戦争の重要な転換点となった戦いとして、歴史に名を刻んでいます。

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