ウォルカエ族

ウォルカエ族：ガリア南部のケルト系部族

ウォルカエ族は、ガリア南部に居住していたケルト系の部族であり、現在のフランス、ラングドック地方にその足跡を色濃く残しています。彼らは、ウォルカエ・テクトサゲスとウォルカエ・アレコミキという二つの主要なグループに分かれていました。

古文献における記述

ウォルカエ族は、紀元前69年にキケロの著作で初めて言及され、ローマの税制に不満を抱いていたことが記されています。また、歴史家リウィウスは、第二次ポエニ戦争におけるハンニバルの進軍との関連で彼らに触れており、紀元前218年にはローヌ川を挟んで対峙したことが記録されています。

カエサルは、紀元前2世紀のエラトステネスの記述を引用し、ウォルカエ・テクトサゲスがヘルキュニアの森（現在のボヘミア地方）に居住していたと述べています。彼はまた、ゲルマン民族の南下により、ウォルカエ・テクトサゲスがゲルマン人の文化や習慣を一部取り入れたとも指摘しています。プトレマイオスもまた、自身の著作においてウォルカエ・アリコミオイとウォルカエ・テクトサゲスについて記述しています。

歴史

歴史学者の間では、ウォルカエ族とテクトサゲス族は元々異なる部族であったとする説があります。紀元前3世紀のケルト人の軍事的拡大の中で、様々な集団が合流し、新たな民族集団として形成されたと考えられています。また、ボイイ族がイタリアへ移動した紀元前5世紀頃、ヘルキュニアの森の開拓地には、スイス高原を拠点とする人々が移住し、ボヘミアやモラヴィアで新たな民族集団が形成され、それがウォルカエ・テクトサゲスになったという説も存在します。

ウォルカエ族は、隣接するエルベ川上流のボイイ族や東部のコティニ族と共に、多くのオッピドゥム（都市）を建設し、地域の資源を開発しました。彼らの文化は紀元前150年から50年頃に最盛期を迎えましたが、その後、北からのゲルマン民族や東からのダキア人の圧力により衰退していきました。

ウォルカエ族は、他の部族と共にバルカン半島への大規模な遠征を行い、デルポイ侵攻を引き起こしたとされています。その後、一部はアナトリアに移住し、トリストボギイ族やトロクミイ族と共に、ガラティア人共同体を形成しました。また、別の一部はカルタゴやローマの傭兵となり、紀元前270年から260年頃にガリア・ナルボネンシスに移住し、ウォルカエ・テクトサゲスとウォルカエ・アレコミキに分かれました。ウォルカエ・テクトサゲスはトロサ（現在のトゥールーズ）を首都とし、ウォルカエ・アレコミキはネマウスス（現在のニーム）地域を拠点とし、エロー川が両部族の境界となりました。

ローマ化とその後

アウグストゥスの治世以降、ウォルカエ族はガリア・ナルボネンシスに統合され、徐々にローマ化が進みました。彼らはラテン語を使用するようになり、トラヤヌスの時代には人口の大部分がラテン語を話すようになりました。その後、彼らの言語はペルピニャンやバルセロナのカタルーニャ語へと進化していきました。

語源

「ウォルカエ」という言葉の語源は確定していませんが、いくつかの説があります。一つは、ゲルマン祖語の「民衆」を意味する言葉に由来するという説、もう一つは、ギリシア語の「狼」を意味する言葉に由来するという説です。また、ハヤブサを意味する言葉に由来するという説もあります。グザヴィエ・ドラマールは、「民衆」説と「狼」説に反対し、印欧祖語の「曲げる」という意味の語根から派生した「ハヤブサ」を意味する言葉が語源であると主張しています。

ウォルカエ族は、モラヴィアにおいてボイイ族やコティニ族と共に大きな影響力を持ち、地中海とゲルマン地域を結ぶ交通路を支配していました。彼らの武勇と地理的な位置から、ゲルマン人は彼らの名前を借用し、ケルト人やローマ人を指す言葉として使用しました。この言葉は、ウェールズ人、イタリア人、フランス人など、古代ローマ属州の住民を広く指す言葉として用いられました。

このように、ウォルカエ族は、ガリア南部の歴史において重要な役割を果たし、その文化や言語は、後の時代にも大きな影響を与えました。

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