ローバー・グループ

ローバー・グループ：英国自動車産業の興亡

ローバー・グループは、かつて英国に存在した自動車会社であり、その歴史は英国自動車産業の盛衰を象徴するものと言えるでしょう。1975年にブリティッシュ・レイランド（BL）として半官半民の状態で発足し、1986年に完全国営化された際にローバー・グループへと社名変更されました。当初はオースチン・ローバー・グループ、ランドローバー・グループ、フライト・ローバー・バン、レイランド・トラックといったブランドを抱えていました。

歴史

国有化から民営化へ

1980年代、英国の自動車産業は厳しい状況に置かれていました。ローバー・グループも例外ではなく、経営再建が急務となっていました。そこで、時の首相マーガレット・サッチャーは、カナダ出身のグラハム・デイをBLの社長兼マネージングディレクターに任命し、大胆な改革を断行しました。その一環として、BLはローバー・グループへと改名されたのです。ローバー・グループは、商用車部門と物流会社のユニパートを分離した後、オースチン・ローバー・グループとランドローバー・グループを統合して形成されました。1988年には、ブリティッシュ・エアロスペース（BAe）に1億5000万ポンドで売却され、民営化を果たしました。BAeはデイをCEO兼会長として留任させ、ローバー・カーズのケヴィン・モーレイをマネージングディレクターに任命しました。1989年には、ローバー・グループ・ホーディングス・リミテッドと再び改名し、乗用車生産部門をオースチン・ローバー・グループ・リミテッド（省略形はローバー・グループ・リミテッド）としました。

BMWによる買収と解体

1994年1月31日、BAeは保有する株式の80%をドイツの自動車メーカー、BMWに8億ポンドで売却しました。この買収劇は、英国議会下院でも大きな騒動となりました。1996年には社名がBMW (UK) ホールディングス・リミテッドと再び変更されました。20%の株式を保有していた日本の自動車メーカー、ホンダは、1980年以来続けていたBL/ローバーとの提携を取りやめ、1ヶ月後には保有する株式をBMWに売却しました。しかしながら、共同で開発したローバー・200、400、600、800の製造に関わるライセンス契約はそのまま維持されました。

BMWはローバー・グループに多額の投資を行いましたが、期待されたほどの利益を上げることができませんでした。ローバーの経営不振により、BMWは150億マルクもの損失を被ったとされています。そして、2000年3月、BMWはローバー・グループの売却計画を発表しました。その結果、グループは解体され、ランドローバー部門はフォード・モーターに、ローバーとMGはMGローバーとして再出発することになりました。

現在のブランドの行方

ローバー・グループが所有していたブランドは、現在、BMW、上海汽車、タタ・グループといった複数の企業に分散して所有されています。上海汽車は現在、MGブランドで自動車を生産しており、MGモーターUK（上海汽車の子会社）は、かつてのローバー・グループのロングブリッジ工場でイギリス国内向けのMG車の組み立てを行っています。同工場では、MG6とMG3が組み立てられ、イギリス国内のディーラーネットワークで販売されています。

主要車種

ローバー・グループ時代には、数多くの車種が生産されました。代表的な車種としては、以下のようなものが挙げられます。

ローバー・800シリーズ: ホンダ・レジェンドとの共同開発車であり、高級車市場で一定の成功を収めました。
ローバー・200シリーズ: 1989年に登場した小型ハッチバック。16バルブのKシリーズエンジンを搭載し、高い走行性能を誇りました。
ローバー・400シリーズ: 200シリーズの4ドア版であり、ファミリーカーとして人気を集めました。
ローバー・メトロ/ローバー・100: 小型車メトロの改良版であり、1990年代まで生産が続けられました。
* ローバー・600シリーズ: ホンダ・アコードをベースにした高級小型車。上質な内装と快適な乗り心地が特徴でした。

ローバー・グループの終焉と教訓

ローバー・グループの歴史は、英国自動車産業の衰退と再生の過程を映し出す鏡と言えるでしょう。国有化、民営化、外資による買収、そして解体という激動の時代を経て、ローバー・グループは姿を消しましたが、そのブランドは今もなお、世界中で愛されています。ローバー・グループの事例は、グローバル化が進む現代において、企業が生き残るためには、変化に柔軟に対応し、独自の強みを磨き続けることが重要であることを教えてくれます。

もう一度検索