ローマ化

ローマ化とは

ローマ化とは、古代ローマが地中海世界やガリア、ブリタニア、ゲルマニアの一部を征服した際、支配下の非ローマ人・非ギリシャ人（蛮族と見なされた人々）に対して、自らの文化を浸透させ、同化を促した政策を指します。ローマ人の文化が実質的にラテン人の文化と同義であったため、ラテン化とも呼ばれます。

現代の視点から見ると、この同化政策は一種の民族浄化と解釈されることもあります。例えば、ガリア人の末裔を自認するフランスの民族主義者からは、ガリア固有の文化を滅ぼしたとして批判されています。一方で、ダキア人の末裔を自認するルーマニアの民族主義者からは、ローマ化を自らの文化の出発点と捉え、肯定的に評価する声もあります。このように、ローマ化に対する評価は現在に至るまで複雑に入り組んでいます。

概要

元々、ラテン人（インド・ヨーロッパ語族に属し、ラテン語を用いる人々）の一派であったローマ人は、ラテン戦争での勝利を経てラテン人を統合し、ローマとラテンは同一化しました。その後、ローマは中部イタリアを制圧し、さらに勢力を拡大、最終的には南部イタリア、北アフリカ、イベリア半島、地中海沿岸部、ガリア、ブリタニア、ゲルマニアの一部に至るまで、広大な領域を支配する世界帝国へと発展しました。

しかし、これらの地域には、ケルト系、イベリア系、ゲルマン系、ヘレニズム系など、ローマ人とは異なる系統の民族が先住していました。ローマは、支配を円滑に進めるために、これらの民族をローマ人として同化させる必要性を認識し、同化政策を推し進めていきました。同化は緩やかではありましたが、着実に進展していきました。

同化政策

ローマ化は、まずローマ軍が異なる系統の住民が暮らす地域に侵攻するところから始まります。敵の軍勢を完全に打ち破った後、ローマは様々な方法で住民に同化を迫ります。以下に、ローマが占領後に行ったとされる主な同化政策を列挙します。

奴隷化と売却: 生き残った占領住民の多くを奴隷として国内外に売却しました。
協力者への恩賞: 戦争でローマ側に寝返った勢力には、恩賞や地位を与え、統治機構に組み込みました。
軍事基地の建設: 軍の前線基地を建設し、多数の軍人を駐屯・入植させました。
退役軍人への土地供与: 退役した軍人に占領地を私有地として与え、入植を促しました。
混血の奨励: 入植した軍人たちに、地元の女性との結婚（混血）を奨励しました。
インフラ整備: 道路や水道などのインフラを整備し、占領地の生活水準を向上させました。
補助部隊の雇用: 地元住民を本国軍の補助部隊（アウクシリア）として雇用しました。
軍隊を通じた教化: 軍隊生活を通じて、ラテン語などのローマ文化を教え込み、教化を図りました。補助部隊で長年勤務した者には、退役時にローマ市民権を与えました。
植民地学校の設置: 占領住民向けの「植民地学校」を建設し、幼い頃からローマ民族として育てる教育を行いました。
宗教的価値観の統一: 土着宗教とローマ神話を合同させることで、宗教的な価値観を一致させようとしました。

ただし、ローマに匹敵する高度な文明や長い歴史を持つ東方の旧ヘレニズム系の地域に関しては、同化政策は行われませんでした。ローマは、これらの地域においては在来の文化を尊重しました。ローマの同化政策は、西方の「蛮族」と見なされた地域に限定され、ラテン語の普及も帝国の西半分に留まりました。帝国の東半分では、ヘレニズム時代と同様にギリシャ語が公用語として使われました。この東方における非同化は、後の東ローマ帝国のギリシャ化につながります。一方、イタリア、フランス、スペイン、ルーマニア、ダルマチアなどでは、ローマ化が深く浸透しました。

後世への影響

ローマ化は後世に大きな影響を与えました。

ロマンス諸語の成立: ラテン語を祖とするロマンス諸語（フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語など）が生まれました。
ローマ法の普及: ローマ法は、現代の法体系の基礎となっています。
ローマ建築: ローマ建築の様式は、ヨーロッパ各地に影響を与えました。
ラテン語由来の名称の増加: 多くの都市や地名、固有名詞がラテン語に由来しています。

関連項目

ラテン文字化: ラテン文字以外の文字体系を使用している言語を、ラテン文字で表記すること（romanization, latinizationとも呼ばれます）。
古代ローマ
ラテン人
ローマ人
ラテン語
地中海連合
* 中国化

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