ローマ略奪 (410年)

ローマ略奪 (410年)

410年8月24日、西ゴート族によるローマ略奪は、西ローマ帝国の歴史における転換点となる出来事でした。この事件は、アラリック1世率いる西ゴート族が、長らく「永遠の都」と称えられてきたローマを侵攻し、略奪したものです。西ローマ帝国の首都は当時ラヴェンナに移っていましたが、ローマは依然として帝国の象徴であり、その陥落は国内外に大きな衝撃を与えました。

背景

西ゴート族の移動とローマ帝国との関係

375年、フン族の圧迫を受けた西ゴート族は、ドナウ川を越えてローマ帝国領内へ侵入しました。当初、ローマ帝国は彼らの移住を容認しましたが、378年に皇帝ウァレンスはこれを撃退しようと試み、ハドリアノポリスの戦いで敗北、自身も戦死しました。その後、皇帝テオドシウス1世は382年に西ゴート族との和平条約を結び、彼らを同盟者として帝国領内に定住させることを認めました。

アラリック1世の台頭と反乱

395年、テオドシウス1世の死後、帝国は東西に分裂し、東ローマ帝国初代皇帝となったアルカディウスは、先帝が西ゴート族に約束した給付金を履行しませんでした。これに対し、西ゴート族は新たに王となったアラリック1世のもとで反乱を起こしました。アラリック1世は、バルカン半島の都市を襲撃し、莫大な賠償金を得て、400年にはイタリア半島北部へ侵攻しました。

スティリコの活躍とホノリウス帝

西ローマ帝国初代皇帝ホノリウスは、ミラノからラヴェンナへ避難しましたが、将軍スティリコによって西ゴート族は撃退されました。しかし、408年にスティリコが処刑されると、アラリック1世は再びイタリア半島を襲撃。ホノリウス帝は講和と賠償金の支払いを約束しましたが、これを拒否したアラリック1世は、ローマへ進撃しました。

ローマ略奪

ローマの包囲と陥落

410年、アラリック1世率いる西ゴート族は、ラヴェンナを避け、直接ローマへ進軍しました。当時、ローマには富が集中し、多くの市民が暮らしていましたが、西ゴート軍に包囲され、食糧不足に陥りました。ローマは和平交渉を試みましたが、ラヴェンナの宮廷の協定違反により失敗し、同年8月24日、西ゴート軍はサラリア門から市内へ侵入、3日間にわたって略奪を行いました。

略奪と破壊

略奪は徹底的に行われ、公共施設や皇帝の墓所が荒らされました。アウグストゥス廟やハドリアヌス廟などの遺灰壺が破壊され、ラテラノ宮殿からは貴重な聖体容器が奪われました。フォルム・ロマヌムの元老院議場付近やサラリア門付近では大規模な破壊が行われましたが、教会施設は被害を免れました。

市民への被害

市民も大きな被害を受け、皇帝の妹ガッラ・プラキディアを含む多くの人々が捕虜となり、奴隷として売られたり、虐殺されたりしました。難を逃れた市民は、遠くアフリカ属州へ逃れました。

略奪後

西ゴート族の移動とアラリック1世の死

3日間の略奪後、アラリック1世は金品と捕虜を連れて南へ移動しました。カンパニア地方などを襲撃しましたが、船が嵐で沈没したため、アフリカ属州へ渡ることはできませんでした。同年、アラリック1世はコゼンツァで病死しました。

アタウルフの台頭と西ゴート王国の建国

アラリック1世の後を継いだアタウルフは、412年に西ゴート軍を率いてガリアへ侵入し、414年には捕虜としていたガッラ・プラキディアと結婚しました。この結婚は、西ゴート族がローマ帝国を征服するのではなく、刷新を試みていることを示しました。415年、ガリアで西ゴート王国が建国され、その後、西ゴート王国と西ローマ帝国は友好的な関係を保ちました。

影響

ローマ略奪は、長らく無敵と思われていたローマ帝国の威信を失墜させ、帝国の衰退を加速させる出来事となりました。この事件は、西ローマ帝国の崩壊へと続く歴史の流れの中で、重要な転換点となりました。

関連項目

ローマ略奪 (曖昧さ回避)
ローマ略奪 (紀元前390年）- アッリアの戦い
ローマ略奪 (455年)
ローマ略奪 (546年)
* ローマ略奪 (1527年)

もう一度検索