ローランド・SCシリーズ

ローランド SCシリーズ：DTMの歴史を彩るサウンドキャンバス

ローランドSCシリーズは、DTM（デスクトップミュージック）用音源モジュールの代名詞であり、「サウンドキャンバス (SoundCanvas)」の総称で知られています。GS規格に準拠し、その中核を担う存在として、多くのDTMユーザーに愛されてきました。この記事では、SCシリーズの各モデルの詳細な解説に加え、関連モデルであるSKシリーズ、そして2015年にリリースされたiOS版とWindows/Mac版のソフトウェア音源についても掘り下げていきます。

SCシリーズの概要

SCシリーズは、ローランドが展開した音源モジュールであり、そのほとんどの機種がGS規格に対応しています。この規格は、MIDIデータをより高度に制御することを可能にし、SCシリーズをDTMの世界における事実上の標準へと押し上げました。特に1990年代半ばには、コンピューターミュージックの制作現場でSCシリーズが広く使用され、その地位を確立しました。

SC-8850/8820以降、その役割はSC-D70を経由してSDシリーズへと引き継がれましたが、SCシリーズが持つその影響力は今なお健在です。旧機種向けのWindows Vista用ドライバが提供されていることからも、その根強い人気が伺えます。また、64ビット版Windowsに対応するシリアルMIDIドライバは存在しないものの、市販のUSB-MIDIインターフェースを介せば、Windows 10環境でも使用可能です。

廉価版モデルとして、一部の機種では表示パネルなどを省略した「ST」モデルも存在します。これらのモデルは、基本性能はオリジナルモデルと同等ですが、DACなどの違いにより、最終的な音声出力の精度に若干の差が見られる場合があります。ただし、SC-8850の廉価版であるSC-8820では、同時発音数が半減しており、音色も一部異なるため、必ずしも同等のサウンドとは言えません。

SCシリーズの主な機種

以下に、SCシリーズの主な機種とその特徴をまとめました。

SC-55

1991年発売。パート数16、最大同時発音数24、音色数317。

SCシリーズの初期モデルで、後の機種とは異なり、音色が指定されていないバンクが選択された場合、基本となる0バンクの音が鳴るように設計されています。カード型のリモコンが付属しており、本体の操作を手元で行うことが可能でした。初期ロットはGSロゴのみ、後期ロットからGMに対応しています。

SC-33

1992年発売。パート数16、最大同時発音数28、音色数226、8ドラムセット+1SFXセット。リズムマシンの筐体を採用した音源モジュールで、海外ではDr. Synth (DS-330) として販売されました。スプリットやデュアルなどの音色編集機能が豊富で、操作性にも優れていました。

SC-50

SC-55mkIIとほぼ同一の筐体を持つ1Uハーフラックモジュールで、日本国内では未発売。SC-55mkIIからMT-32互換音色を省いたモデルです。パート数16、最大同時発音数28、音色数226、8ドラムセット+1SFXセットを搭載しています。

SC-155

1992年発売。パート数16、最大同時発音数24、音色数317。初代SC-55にボリュームスライダーを追加したモデルです。ただし、スライダーでフィルターをリアルタイムに制御する機能は搭載されていません。

SCC-1

1992年発売。パート数16、最大同時発音数24、音色数317。初代SC-55を基にしたISAカードです。

SC-55mkII

1993年発売。パート数16、最大同時発音数28、音色数354、10ドラムセット。90年代初期のGS音源の標準機として、多くのMIDIデータが作成されました。初期ロットにはリモコンが付属していましたが、後に廃止されています。

SK-50

SC-55mkIIの音源部にスピーカーを搭載したキーボードモデル。61鍵ベロシティ対応。操作パネルのボタンは少なく、液晶ディスプレイは4桁の7セグメントディスプレイです。

SK-50IV

上記SK-50の白色モデル。

SCC-1A/SCC-2

SC-55mkIIを基にしたISAカードで、それぞれ異なるミュージ郎シリーズに同梱されました。

SC-7

パート数16、最大同時発音数28音。GMのみに対応した音源モジュール。ローランド製品としては珍しくGS非対応。MIDI端子はINのみを装備します。2系統の入力端子を備え、簡易ミキサーとしても機能します。

SC-55ST/SC-55ST-WH

SC-55mkIIからディスプレイやボタン類を省略した廉価版。音源部はSC-55mkIIと同等です。SC-55ST-WHは、その白色モデルです。

SC-55K

SC-55STにマイク端子を追加し、カラオケ機能も搭載したモデルです。MIDI OUT、MIDI THRU、INPUTが復活しています。

SCP-55

SC-55mkIIと同等の音源とサウンドカード機能を内蔵したPCMCIA TypeII用カード。

SC-88

1994年発売。パート数32、最大同時発音数64、音色数654、24ドラムセット。ユーザーバンクがあり、音色をエディットして保存できます。音色マップの概念が導入された最初のモデルです。

SC-88VL

1995年発売。初代SC-88の廉価版で、1Uハーフラックサイズ、ACアダプタ駆動。ユーザー音色設定用のボタンが省略されています。

SC-88ST

SC-88VLからディスプレイやボタン類を省略したモデル。32パート分のインジケーターを装備しています。

SC-88Pro

1996年発売。パート数32、最大同時発音数64、音色数1117、42ドラムセット。SCシリーズの決定版として、多くのMIDIデータ作成に用いられました。XGフォーマットの互換モードにも対応しています。通称「ハチプロ」。

SK-88Pro

SC-88Proの音源部を搭載したキーボードモデル。37鍵ベロシティ対応です。

SC-88ST Pro

SC-88Proからディスプレイやボタン類を省略した廉価版。

SC-880

SC-88 Proを1Uラックサイズにし、ロータリーエンコーダーとフレーズプレビュー機能を搭載した海外向けモデル。

SC-8850

1999年発売。パート数64、最大同時発音数128、音色数1640、63ドラムセット。音色あたりの最大ボイス数が4に増え、より高音質になりました。GM2に対応し、フレーズプレビュー機能も追加されています。SCシリーズで初めてUSBに対応しました。

SC-8820

1999年発売。SC-8850を半分のスペックにしたモデルで、USBバスパワー駆動が可能です。

SK-500

SC-8820の音源部を搭載したキーボードモデル。49鍵ベロシティ対応。

SC-D70

SC-8820に外部入力端子を追加し、DAWにも対応させたモデル。SCシリーズとSDシリーズの橋渡し的な存在です。

SOUND Canvas for iOS/SOUND Canvas VA

2015年に発売されたソフトウェア音源で、iOS版とWindows/Mac版が存在します。SCシリーズの音色を再現し、DAWとの連携が可能です。

その他の機種

CM-300, CM-500, JV-30, XP-10, SD-35, SB-55, P-55, M-GS64, PMA-5, VE-GS1, VE-GSPro, MC-80EX, GPPC-N, RAP-10/AT, SCB-7, SCB-55, FMT-403, FMT-403Aなど、様々な関連機種が存在します。

SCシリーズの影響と現在

SCシリーズは、その高い音質とGS規格への対応により、DTMの世界で確固たる地位を築きました。現在でも多くのユーザーに愛用され、そのサウンドは多くの楽曲に影響を与えています。ソフトウェア版の登場により、そのサウンドを手軽に体験できるようになったことも、SCシリーズの遺産が現在に生き続けている証と言えるでしょう。


SCシリーズは、まさにDTMの歴史を語る上で欠かせない存在であり、そのサウンドは今後も多くの音楽クリエイターに影響を与え続けることでしょう。

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