ロール・ウィズ・イット (アルバム)

アルバム概要

『ロール・ウィズ・イット』（Roll with It）は、イギリスを代表するミュージシャン、スティーヴ・ウィンウッドが1988年に発表した、ソロ名義では5作目のスタジオ・アルバムです。本作は、ウィンウッドがヴァージン・レコードへ移籍後、最初に発表した作品にあたります。

制作背景と音楽性

前作『バック・イン・ザ・ハイ・ライフ』（1986年）でエンジニアを担当したトム・ロード＝アルジが、今作ではプロデューサーとしても名を連ねています。レコーディングには、R&Bやソウル音楽の分野で名高いホーン・セクション、メンフィス・ホーンズのメンバーであるウェイン・ジャクソン（トランペット、トロンボーン）とアンドリュー・ラヴ（テナー・サクソフォーン）が参加しており、楽曲に厚みを与えています。

ウィンウッド自身は、この時期にアメリカのテネシー州へ移り住んだことが、本作のソウルやR&Bといった音楽的要素に影響を与えたと語っています。

収録曲の中には、アメリカのビール「Michelob」のテレビコマーシャル用に制作された「ドント・ユー・ノウ・ホワット・ザ・ナイト・キャン・ドゥ?」や、トラフィック時代からの盟友であるジム・キャパルディとの共作「ハーツ・オン・ファイアー」など、特筆すべきエピソードを持つ楽曲が含まれています。

商業的成功と評価

本作は国内外で大きな成功を収めました。

イギリス: 全英アルバムチャートでは最高4位を記録し、16週にわたりチャート圏内にとどまりました。これは彼にとって3度目の全英トップ10入りとなりました。
アメリカ: アメリカの主要アルバムチャートであるBillboard 200では、見事首位に輝き、ウィンウッドにとって初の全米ナンバーワン・アルバムとなりました。また、『ビルボード』のR&Bアルバム・チャートでも93位にランクインしています。1988年11月には、RIAA（アメリカレコード協会）によりダブル・プラチナ認定を受けるなど、商業的に高い実績を残しました。

本作からは複数のシングルがヒットしました。

「ロール・ウィズ・イット」: 全英53位、全米1位
「ドント・ユー・ノウ・ホワット・ザ・ナイト・キャン・ドゥ?」: 全英89位、全米6位
「ホールディング・オン」: 全米11位
「ハーツ・オン・ファイアー」: 全米53位

音楽賞としては、グラミー賞の最優秀アルバム賞にノミネートされましたが、受賞は逃しました。しかし、共同プロデューサー兼エンジニアのトム・ロード＝アルジは、本作のエンジニアリングで最優秀エンジニア・アルバム賞を受賞しています。

音楽評論家からの評価も高く、Ultimate Classic RockのMichael Gallucciは本作を「スペンサー・デイヴィス・グループ時代以来となる、ウィンウッドの最もソウルフルなアルバム」と評し、タイトル曲「ロール・ウィズ・イット」を「スティーヴ・ウィンウッドの曲トップ10」の7位に選んでいます。

収録曲

全8曲が収録されています（特記なき楽曲はスティーヴ・ウィンウッドとウィル・ジェニングスの共作）。

1. ロール・ウィズ・イット - "Roll with It" (Steve Winwood, Will Jennings, Eddie Holland, Lamont Dozier, Brian Holland) – 5:21
2. ホールディング・オン - "Holding On" – 6:16
3. ザ・モーニング・サイド - "The Morning Side" – 5:15
4. プット・オン・ユア・ダンシング・シューズ - "Put on Your Dancing Shoes" – 5:12
5. ドント・ユー・ノウ・ホワット・ザ・ナイト・キャン・ドゥ? - "Don't You Know What the Night Can Do?" – 6:55
6. ハーツ・オン・ファイアー - "Hearts on Fire" (S. Winwood, Jim Capaldi) – 5:17
7. ワン・モア・モーニング - "One More Morning" – 5:00
8. シャイニング・ソング - "Shining Song" – 5:32

主要参加ミュージシャン

スティーヴ・ウィンウッド: ボーカル、キーボード各種、ベース各種、ギター、プログラミング
マイク・ロウラー: キーボード
ロビー・キルゴア: キーボード (#2, #4, #8)
ポール・ペスコ: ギター (#3, #6)
ジョン・ロビンソン: ドラムス (#2, #3, #4, #5, #6, #7)
バシリ・ジョンソン: パーカッション (#2, #3, #4, #5, #7)
ジミー・ブラロウアー: パーカッション、ドラムマシン、マシン・パーカッション (#4, #8)
トム・ロード＝アルジ: タンブリン (#8)
ウェイン・ジャクソン: トランペット、トロンボーン (#1, #2, #6, #7)
アンドリュー・ラヴ: テナー・サクソフォーン (#1, #2, #6, #7)
テッサ・ナイルズ: バッキング・ボーカル (#1, #2, #4, #5, #6, #8)
マーク・ウィリアムソン: バッキング・ボーカル (#1, #2, #4, #5, #6, #8)

本作は、スティーヴ・ウィンウッドのキャリアにおいて、特にアメリカ市場での成功を決定づけた重要なアルバムとして位置づけられています。

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