ローレライ＝ラインの調べ

『ローレライ＝ラインの調べ』について

ヨハン・シュトラウス1世が作曲したウィンナ・ワルツ『ローレライ＝ラインの調べ』（作品154）は、ライン川とそこにそびえるローレライの岩山を題材にした作品です。ローレライとは、その岩山に棲むという伝説の水の精の名前であり、その美しい歌声で漁師を魅了し、破滅に導くと伝えられています。シュトラウス1世は、この神秘的な伝説にインスピレーションを受け、ワルツという形で表現しました。

この作品は、『ラデツキー行進曲』が発表されるまで、シュトラウス1世の代表作とみなされていました。今日でも、作曲者の最も有名なワルツ作品の一つとして知られています。息子であるヨハン・シュトラウス2世が音楽家としてデビューした際、この曲を演奏したというエピソードも有名です。父の傑作を演奏することで、父への敬意を表し、ライバルとなる意思はないことを示したと言われています。ただし、聴衆の反応から自身の楽曲への自信を深め、あえて父の代表作を演奏したという説もあります。

現在では、『ラデツキー行進曲』がシュトラウス1世の最も有名な作品として広く知られていますが、その陰に隠れて、『ローレライ＝ラインの調べ』は以前ほどの知名度はありません。しかし、シュトラウス1世のワルツ作品の中では、現在でも演奏される機会が最も多い作品の一つであり、その美しい旋律は多くの人々に愛されています。20世紀に制作されたオペレッタ『ウィンナ・ワルツ』にも劇中音楽として登場し、1954年のオーストリア映画『女王さまはお若い』でも使用されました。また、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるニューイヤーコンサートにも複数回登場しており、シュトラウス1世のワルツ作品としては最も多い登場回数を誇ります。

楽曲構成

このワルツは、序奏、5つの小ワルツ、そしてコーダという構成で成り立っています。各ワルツは、AパートとBパートに分かれており、それぞれ異なる魅力的な旋律が展開されます。

ニューイヤーコンサートでの演奏

『ローレライ＝ラインの調べ』は、以下のニューイヤーコンサートで演奏されました。

1965年 - ヴィリー・ボスコフスキー指揮
1979年 - ヴィリー・ボスコフスキー指揮

まとめ

『ローレライ＝ラインの調べ』は、ヨハン・シュトラウス1世の円熟した作曲技法と、ロマンティックな伝説が融合した傑作です。現在では、『ラデツキー行進曲』ほど有名ではないかもしれませんが、シュトラウス1世のワルツ作品の中でも特別な存在であり、その美しい旋律は今もなお、多くの人々を魅了し続けています。

参考文献

ピーター・ケンプ 著、木村英二 訳『シュトラウス・ファミリー：ある音楽王朝の肖像』音楽之友社、1987年10月。ISBN 4276-224241。
増田芳雄「ウイーンのオペレッタ-1.ヨハン・シュトラウスの"こうもり"(Die Fledermaus)について」『人間環境科学』第7号、1998年、75-129頁、NAID 120005571700。
小宮正安『ヨハン・シュトラウス ワルツ王と落日のウィーン』中央公論新社〈中公新書〉、2000年12月。ISBN 4-12-101567-3。
加藤雅彦『ウィンナ・ワルツ ハプスブルク帝国の遺産』日本放送出版協会〈NHKブックス〉、2003年12月20日。ISBN 4-14-001985-9。
ジャック・ルシューズ 著、岡田朋子 訳『オペレッタ』白水社、2013年10月30日。ISBN 978-4-560-50984-5。

外部リンク

ワルツ『ローレライ＝ラインの調べ』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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