ワインクーラー

ワインクーラー（Wine cooler）は、ワインとフルーツジュースを主成分として作られるアルコール飲料です。しばしば炭酸水や砂糖が加えられることも多く、手軽に楽しめる低アルコール飲料として親しまれています。

その歴史を辿ると、1980年代初頭にはすでに家庭で親しまれていたスタイルを基にした瓶詰め製品が登場し、広く流通するようになりました。特に、通常のワインよりもアルコール度数が低い点が着目され、より緩やかな法規制が適用される地域での販売において有利に働いたとされています。

近年では、2004年頃のドイツでの普及が注目されました。これは、ドイツ政府が同年8月1日に、アルコポップと呼ばれる若者向けの低アルコール飲料に対する酒税を1瓶当たり0.80〜0.90ユーロへと引き上げたことが背景にあります。増税によるコスト上昇を避けるため、多くの酒販業者が、同様に販売可能なワインクーラーに代替した結果、その人気が高まりました。

一方、アメリカ合衆国においては、1991年1月に議会によってワインに対する酒税が大幅に引き上げられたことが大きな転換点となりました。これによりコストが増加した多くのワインクーラー製造者は、より安価なモルトリカー（麦芽飲料）を基材とする製品へと切り替えざるを得なくなりました。こうしたモルトベースの製品も慣習的に「ワインクーラー」と呼ばれることがありますが、厳密には「麦芽飲料」や単に「クーラー」といった異なるカテゴリーに分類される飲料です。例えば、Bartles & Jaymesといったブランドは、こうした麦芽ベースの飲料を「flavored malt cooler」と称しています。

家庭で手作りされる場合、ワインがベースとなることには理由があります。ワインはアルコール度数15〜17%程度で、例えばアルコール度数40%程度の蒸留酒と比較すると、水分含有量が2.4倍から2.7倍多く、約85%を水分が占めています。この特性から、ドリンクミキサーや濃縮タイプのフルーツシロップといった液体と容易に混合できます。通常、アルコール度数をさらに下げる目的で、ワインに対して3〜7%程度のフルーツジュースが加えられます。これにソーダマシンなどで炭酸を加えて、アルコポップのような状態にし、さらにソフトドリンクシロップを加えることで、最終的なアルコール度数を調整します。

市販されているワインクーラーにおいては、フルーツや砂糖の強いフレーバーがワイン本来の風味を覆い隠してしまうため、最も等級の低い安価なワインが使用されることが多いとされています。

関連する飲料としては、アルコポップのほか、ミモザ、キール、サングリア、スプリッツァ、ティント・デ・ベラノなどが挙げられます。これらもワインやスパークリングワインをベースとしたカクテルや飲料であり、ワインクーラーと同様に比較的気軽に楽しめるものが多いです。

このように、ワインクーラーは税制の変化や手軽さから普及した歴史を持ち、その定義や製造方法も時代や地域によって多様性が見られる飲料と言えます。

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