ワウフラッター

ワウフラッターとは

ワウフラッター（wow and flutter）とは、レコードプレーヤーの回転やテープレコーダーの磁気テープの走行における速度のムラによって生じる、音の高さの揺れを指す言葉です。この現象は、音楽再生において音質を著しく損なう要因となり、特にレトロな音響機器を使用する際には避けて通れない問題です。

「ワウ」は、比較的ゆっくりとした周期で生じる音の揺れを指し、音が伸びたり縮んだりするように聞こえます。一方、「フラッター」は、より速い周期で生じる音の揺れで、音が震えるように聞こえるのが特徴です。この二つの言葉を合わせた「ワウフラッター」は、音響機器の性能を評価する上で重要な指標とされています。

ワウフラッターの数値はパーセント（%）で表され、数値が小さいほど性能が良いとされます。測定には専用のワウフラッターメーターが用いられます。近年、ユネスコが磁気テープに記録された文化遺産のデジタル化を推奨しており、ワウフラッターは古い音響機器を扱う上で、より一層理解が必要な概念となっています。

ワウフラッターの発生原因

ワウフラッターの発生原因は多岐にわたりますが、主なものとして以下の要因が挙げられます。

キャプスタンの偏心とガタ: テープレコーダーのキャプスタン（テープを一定速度で送る軸）が中心からズレていたり、ガタついていると、テープの走行速度が不安定になりワウフラッターが発生します。
駆動機構の偏心や不平衡: キャプスタンを駆動する機構の回転部分が偏心していたり、バランスが崩れている場合も、同様に速度ムラの原因となります。
磁気テープの振動: 特にテープの長手方向の振動は、磁気ヘッドとの接触を不安定にし、ワウフラッターを引き起こします。
供給リール側のテープ張力ムラ: テープを供給するリールの張力が一定でない場合も、テープの走行速度にムラが生じます。
ゴムベルトの不均一: レコードプレーヤーやテープレコーダーの駆動に使われるゴムベルトが劣化したり、均一でないと回転ムラの原因になります。
ゴムベルトの形状記憶: 長期間使用せずに放置されたゴムベルトは、特定の位置で変形し固まり、使用再開時にワウフラッターの原因となることがあります。
モーターの回転不安定: 特に商用電源に同期するモーターでは、電源周波数の変動が回転ムラの原因となります。DCモーターの場合でも、温度変化によって回転が不安定になることがあります。

レコードプレーヤー特有の原因

レコードの偏心: レコード盤の中心穴が、音溝の中心からズレていると、回転時に針が左右に振られ、ワウが発生します。これは、レコード盤の製造過程や、プレーヤーにセットする際のわずかなズレによって生じます。

テープレコーダー特有の原因

ピンチローラーとキャプスタンの汚れ: ピンチローラーやキャプスタンに汚れが付着すると、テープの走行が不安定になり、ワウフラッターが発生します。定期的な清掃が必要です。

デジタル機器の場合

デジタルオーディオ機器（CDプレーヤーやデジタルオーディオプレーヤーなど）では、ワウフラッターはほぼ問題になりません。CDプレーヤーでは、回転ムラをデジタル制御により極限まで小さくしています。さらに、デジタルオーディオ機器では、データを一旦メモリーに保存し、水晶発振器によって一定速度で再生するため、ワウフラッターは測定限界以下とされます。

ワウフラッターの測定法

ワウフラッターの測定は、特定の周波数（例えば3kHz）の純音を録音・再生し、その出力の周波数変動を専用のメーターで測定することで行われます。変動量を録音信号の周波数に対するパーセントで表します。ただし、測定条件や機器によって数値が異なる場合があるため、注意が必要です。

ワウフラッターは、アナログ音響機器を扱う上で避けて通れない現象であり、その原因を理解し、適切な対策を講じることが、良好な音質で音楽を楽しむために重要です。

脚注

注

ワウフラッター