ワジリスタン紛争

ワジリスタン紛争とは

ワジリスタン紛争は、2001年のアフガニスタン侵攻後、パキスタン北西部のワズィーリスターンおよびその周辺地域で発生した関連する一連の武力衝突を指します。この紛争は、アメリカ合衆国を中心とする有志連合と、ワジリスタンに潜伏するターリバーンやアルカーイダ、現地の部族勢力との戦いと位置付けられています。この地域は、その独特な歴史的背景や民族的な構成から、長年にわたり紛争の舞台となってきました。

前史と地域背景

パシュトゥーン人は、ヒンドゥークシュ山脈とスライマーン山脈の間に分布する民族であり、現在では約2800万人が存在します。19世紀にはロシア帝国と大英帝国の影響で、彼らの領域が分断され、デュアランドラインによってアフガニスタンとパキスタンに分かれました。この未解決の分断は、パシュトゥーン人のアイデンティティに影響を与え、現在も続く緊張の一因となっています。

パキスタンは、独立後もインドとの対立が続いており、特に1970年代の第三次印パ戦争以降は、国内における自国のイスラム化を推進しています。その一環として、ターリバーンへの支援を行い、アフガニスタンにプロパキスタン的な政権を樹立しようとしました。

2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカはパキスタンに対し、テロとの戦いに参加するよう圧力をかけました。これにより、パキスタンはアメリカ合衆国の要求に応じてターリバーンとの関係を断つ難しい決断を迫られました。ムシャラフ大統領はその結果として、アメリカの支援を受け入れる宣言を行い、紛争の火種が散発的に燃え上がることとなります。

経過：開戦から合意まで

2001年から2006年の期間、パキスタン軍はアフガニスタンとの国境地域でアルカーイダやターリバーンに対して複数回の大規模な軍事作戦を実施しました。これらの作戦は、しばしば武装勢力との和平協定を結ぶものでしたが、その効果は限定的でした。特に、2006年に結ばれた南ワジリスタン合意は表面上の平和をもたらしましたが、現地ではさまざまな武装グループが依然として活動を続け、後の衝突を誘発しました。

この時期には、多くの過激派指導者が捕えられる一方、パキスタン軍とターリーバンの衝突も増大していき、各地で厳しい戦闘が続きました。また、武装勢力による自爆テロや民間人を狙った攻撃も相次ぎ、パキスタン国内の治安情勢は次第に悪化しました。

ラール・マスジッド籠城事件とターリバーンの強化

2007年、ラール・マスジッド籠城事件が発生し、首都イスラマバードにおける武闘派の暴動が拡大しました。この抗議運動は、政府との衝突を引き起こし、ターリバーンの拡大をもたらしました。彼らはこの混乱を利用して、さらに多くの地域を制圧し、影響力を強化していきます。

ザルダーリー政権とその後の展開

2008年、ムシャラフ大統領が退陣し、アースィフ・アリー・ザルダーリーが新大統領に就任しました。ザルダーリー政権下でも、アメリカ軍とパキスタン軍による共同の過激派掃討作戦が行われました。しかし、ターリバーンはより組織化され、ますます強固な支持基盤を持つようになります。

まとめ

ワジリスタン紛争は、地域の歴史的背景や複雑な利害関係に深く根ざした紛争です。このような地域的な問題に対して、国際的な介入が加わることで状況が複雑化しました。現在でも、ワジリスタン地域における緊張は続いており、新たな平和の兆しが見えない状況が続いています。

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