ワダダ・レオ・スミス

ワダダ・レオ・スミスは、1941年12月18日にミシシッピー州リーランドで生まれた、アメリカを代表するトランペッター、作曲家です。彼は主にアヴァンギャルド・ジャズやフリー・インプロヴィゼーションといった革新的な音楽分野で活動し、そのキャリアを通じてジャズの可能性を拡張し続けてきました。特に、2012年に発表したアルバム『Ten Freedom Summers』は高い評価を受け、2013年のピューリッツァー賞音楽部門において、最終候補者3名のうちの1人に選出されるという栄誉に輝いています。

スミスの音楽的な旅は、トランペットにたどり着くまでに様々な楽器を経験することから始まりました。初期にはドラム、メロフォン、フレンチホルンなどを演奏し、リズム・アンド・ブルースのグループでの活動を経て、自身の主要楽器としてトランペットを選びました。彼のキャリアにとって重要な転機の一つは、1967年頃にシカゴで活動していたAACM（Association for the Advancement of Creative Musicians）のメンバーとなったことです。AACMでは、リロイ・ジェンキンス（ヴァイオリン）、アンソニー・ブラクストン（サクソフォーン）と共に、先駆的なグループであるクリエイティヴ・コンストラクション・カンパニーを結成し、即興演奏と作曲の境界を探求しました。

1971年には、自己の音楽を発表するための独立レーベル「Kabell」を設立しました。また、ヘンリー・スレッギル（サクソフォーン）、アンソニー・デイヴィス（ピアノ）、オリヴァー・レイク（サクソフォーン）といった才能あるミュージシャンたちと共に、自身のグループNew Dalta Ahkriを結成し、独自のサウンドを追求しました。1970年代を通じて、スミスはウェズリアン大学で民族音楽学を学び、音楽への多角的な視点を養いました。この時期には、再びアンソニー・ブラクストンや、イギリスの即興演奏家であるデレク・ベイリーが率いるカンパニーとの共演も行っています。作曲面では、1970年に開発した「Ankhrasmation」と呼ばれる独自の図形譜システムを積極的に活用し、従来の楽譜に捉われない革新的な表現方法を確立しました。

1980年代半ばからは、ラスタファリ運動に傾倒し、現在広く知られている「ワダダ」という名前を使い始めました。教育者としても長年活躍しており、1993年から2014年までカリフォルニア芸術大学で教鞭を執り、次世代のミュージシャンの育成に貢献しました。彼はトランペットやフリューゲルホルンだけでなく、箏、カリンバ、ガーナの竹笛であるatentebenといった様々な世界の楽器も演奏し、自身の音楽に取り入れています。また、楽器そのものを作成するコースも教えていた経験があります。

他のアーティストとの重要なコラボレーションも多数あります。特にギタリストのヘンリー・カイザーとは、マイルス・デイヴィスの1970年代のエレクトリック・ジャズ期へのオマージュとして『ヨ・マイルス!』（1998年）を発表しました。このアルバムとその後の続編（『Sky Garden』『Upriver』）では、多くのミュージシャンが参加し、マイルスのサウンドに触発された楽曲を演奏しています。

自身がリーダーを務めるグループの中でも、ゴールデン・カルテットは特に重要です。このグループは幾度かメンバーを変えながら活動を続け、初期にはジャック・ディジョネット（ドラム）、アンソニー・デイヴィス（キーボード）、マラカイ・フェイバース（ベース）が参加していました。後の編成では、フェローン・アクラフ（ドラム）、ジョン・リンドバーグ（ベース）、アンソニー・デイヴィス（ピアノ）といった面々が名を連ねています。

2000年代に入っても、スミスは精力的に活動を展開し、ジョン・ゾーンのレーベル「ツァディク」や「パイ・レコーディングス」から数多くのアルバムを発表しています。2008年には、ゴールデン・カルテット名義でDVD『Freedom Now』をリリースするなど、その創造性は衰えることを知りません。ワダダ・レオ・スミスは、その革新的な演奏、作曲、そして教育活動を通じて、現代ジャズシーンにおいて確固たる地位を築いている音楽家です。

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