ワダ・パーヴ

ワダ・パーヴ：インドを代表する国民食の知られざる魅力

ワダ・パーヴは、インド、特にマハーラーシュトラ州で親しまれている、庶民的なベジタリアン・ファーストフードです。揚げたてのポテトのコロッケを、半分に割ったパンに挟んで、チャツネと青唐辛子と一緒にいただく、シンプルながらも奥深い味わいが特徴です。ムンバイの街角で生まれたワダ・パーヴは、今やインド全土、そして世界に広がりを見せています。

語源と歴史

「ワダ・パーヴ」という名前は、マラーティー語に由来します。「ワダ (vada)」は風味豊かな揚げ物料理を指し、「パーヴ (pav)」はポルトガル語の「pão（パン）」から来た言葉です。つまり、ワダ・パーヴは「揚げ物のパン」という意味になります。

最も有力な起源説は、1960年代後半のムンバイです。ダダール駅周辺の工場地帯で、アショク・ヴァイディヤ氏によって屋台で販売されたのが始まりとされています。それ以前には、カリヤーンのワゼ家が自宅の窓から販売していた「キドキ・ワダ・パーヴ」も知られています。手軽で安価なワダ・パーヴは、工場労働者を中心に瞬く間に人気となりました。1971年当時は、わずか10～15パイサという低価格で提供され、忙しい労働者にとって、手軽で腹持ちの良い食事として最適だったのです。

ワダ・パーヴは、マハーラーシュトラ州を地盤とする政党、シヴ・セーナーとも深く関わっています。同党は、1970年代のムンバイにおけるストライキや混乱期に、労働者の権利擁護を掲げて台頭しました。党首バール・タークレーは、マラーターの人々に屋台経営を推奨しており、ワダ・パーヴはその象徴的な存在と言えるでしょう。

多様なバリエーションと商業化

ワダ・パーヴは、ムンバイだけでも地域によって様々なバリエーションが存在します。スパイスの配合や、チャツネの種類、パンの種類などが異なり、それぞれの地域で独自の進化を遂げてきました。近年では、Kunjvihar Jumbo Kingやゴリ・ワダ・パーヴのような大型チェーン店も展開しており、その人気はますます高まっています。ムンバイ以外では、「パーヴ・ワダ」という変種がナーシクで人気です。

ワダ・パーヴの人気の高まりは、2009年に「シヴ・ワダ・パーヴ」というブランドの誕生にも繋がりました。また、毎年8月23日は「世界ワダ・パーヴの日」として祝われています。

ワダ・パーヴの作り方

ワダ・パーヴの調理は比較的シンプルです。まず、ゆでたジャガイモをつぶし、刻んだ青唐辛子、ニンニク、マスタードの種、ターメリックなどのスパイスと混ぜ合わせます。これを丸めてグラムフラワーをまぶし、油で揚げます。揚げたワダをパンに挟み、チャツネと青唐辛子と一緒に提供します。シンプルながらも、スパイスのバランスや揚げ加減など、熟練の技が求められます。

まとめ

ワダ・パーヴは、単なるファーストフードを超えた、インドの文化や歴史を象徴する存在です。その手軽さとおいしさ、そして地域に根付いた多様なバリエーションは、多くの人々を魅了し続けています。これからもワダ・パーヴは、インドの食文化を代表する料理として、世界中の人々に愛され続けることでしょう。

もう一度検索